AnotherPlayer
AnotherPlayer TOPへ戻る
一覧へ

幻想と現実
決して交わることの無いはずだった二つが邂逅する。
それは多くの悲劇と混乱をもたらした。
だが、それも両側に住む人々の歩み寄りで終息する筈だった。
そう、終わる。
だが、それは安寧ではなく最悪な形で終わりへと落下する。

和平会談の場
幻想郷側は博麗霊夢とレミリア・スカーレットが代表者となっていた。
本来ならば幻想郷の管理者である八雲紫が代表となるのが筋だが
最近では全くと言って良いほどに姿を現さず、連絡すらもつかない。
外の世界はこの土地の代表者として市長と日本政府の議員。
そして、協力体制をとっていた連合とザフトの代表も立会人として召還されていた。
外の世界の代表は幻想郷側の代表の幼さに怪訝な表情を浮かべる。
霊夢も十代前半の少女だ。
レミリアにいたっては幼児と言っても差し支えの無い容姿をしている。
だが、そのレミリアと大差ないほどの幼女が地形を変形させるほどの力を見せ付けていることをこの場に集まったものは知っていた。
妖怪と言う存在。
それを見た目で推し量ることは愚かなのだと知識としては理解している。
議員と言えども一般人に過ぎない。
その表情には恐怖が隠れている。

「久しぶりだな」
アスランは会合の前に霊夢に挨拶をする。
霊夢はアスランの顔を見上げるが小首をかしげる。
「誰だったかしら?」
「君とは一度、会ったぐらいだから忘れたのか。
シンたちと一緒に破滅の存在と戦った後に会ったんだが」
「あぁ……そう言えば、居たような気がするわね。
でも、対して話もしてないし人数も多かったから流石に覚えきれないわよ」
霊夢は覚えていなかったことに対して気にしている様子も無く答える。
そんな彼女の様子にアスランは苦笑いを浮かべた。
「今回の話、上手くいくと良いな」
アスランは気を取り直して話題を出す。
「上手くいかせるのよ。幻想郷と外の世界で争ってる場合じゃないもの」
「……破滅の存在か」
「えぇ、あれは今もこの近くに潜んでいる。
早く退治しないと大変なことになるわ」
霊夢自身も焦燥を感じているようだった。
破滅の存在の力は目の当たりにしている。
そして、それとは関係なく争っていると言う事態はあの存在に対して有利でしかない。
一刻も早く余計な争いは終わらせてそちらに尽力しなくてはならないのだ。

会談が始まる。
争いを止める為、平和を手にするための話し合いが。
だが、その会合は謎の爆発で終了する。
会談に参加したものの生死は不明。
いや、生き残ったのはレミリア・スカーレットと博麗霊夢のみ。
その他の参加者の生存は絶望的だと判断された。
何せ会場の全てが吹き飛ぶほどの爆発だったのだから。

それに対し日本政府、連合、ザフトは幻想郷への攻撃を決定する。
此度の会談は幻想郷側の罠であり、その卑劣な罠によって尊い命が奪われたとして。
人に仇なす邪悪を排除するために人類はその剣を向けた。













AnotherPlayer
第四十三話「幻想を侵攻する現実」







紅魔館
その一室に剣崎、士郎、カズキ、なのは、真紅が集められていた。
それに相対するのはレミリア・スカーレット。
その横には十六夜咲夜とパチュリー・ノーレッジが控えている。
そして、その少し離れた位置で霊夢が座っている。
「一体、何があったんだ?」
剣崎が話を切り出す。
ここに集められた剣崎たちはかの会談で何があったのかを知らない。
だが、レミリアと霊夢が政府が発表したように人を陥れるために会談を持ちかけたのだと信じているわけではない。
何か事情があったのだと思っている。
「嵌められたのよ」
レミリアがそれに答える。
「嵌められた?」
「そうよ……連合の代表が持ち込んだ鏡。そこから奇妙な人形が現れたわ」
「!?」
レミリアの言葉に真紅が反応する。
「心当たりがあるのね?」
レミリアが視線を真紅へと向ける。
「その人形は右目から白い薔薇を生やしていたわね」
「質問じゃなくて断定ね……まぁ、その通りなのだけど。
やはり、貴方の仲間の内の一体なのかしら?」
「そうね……ローゼンメイデンの一体ではあるわ。
迂闊だったわね……雪華綺晶の目的を考えれば和平会談を潰そうとすることは考えられた筈だったのに……」
真紅は苦虫を噛み潰したように呟く。
雪華綺晶はこの世界で巻かなかった世界の再現を行おうとしている。
その為に幻想郷は人間に潰されなくてはならないのだ。
「その雪華綺晶がどんな思惑を持って会談を破壊したのか知らないわ。
確かに許せないけど今はその落とし前をつけさせる前にしなければならない事がある」
「人間との戦いに生き残る……」
咲夜が呟く。
だが、レミリアはそれを首を振り否定する。
「違うわ。勝つのよ!」
レミリアは言い切る。
その小さな体に自信を漲らせるようにそう断定した。
「まぁ、単体での戦闘力なら負ける気は無いけど人間の数は多いわよ」
パチュリーがそんなレミリアに告げる。
「そんなことは分かっているわ……だから、こうして恥を忍んでこうして彼らに来てもらっているのだから」
レミリアはこの場に集められている客人を一望する。
「貴方たちは霊夢が選んだ人間側で信用できる者。
貴方たちが人の側に起ち、人を救うために生きる者だと知っている。
それでも恥も外聞も捨てて、このレミリア・スカーレットが頼むわ。
その力を私に貸して頂戴」
レミリアはその小さな体に不似合いなプライドを捨てて人間たちに頭を下げる。
今まで協力関係にはあった。
だが、直接的に人間と敵対するとなった以上、人間である剣崎たちはその戦いに参加する訳には行かなかった。
悪魔で戦争を阻止することでの強力に過ぎない。
実際の戦争で人の側を離れ、妖の側に立つことなど許されるはずは無い。
「それは俺たちに人間の敵になれっていう事か?」
そんなレミリアの視線を受けて剣崎が問う。
その言葉に剣崎以外の人間たちは息を呑む。
「そうよ。今、この時だけは人を捨て、人にその剣を向けて欲しい」
レミリアは言い繕う事をせずに真っ直ぐに剣崎に告げる。
「……分かった。俺は人間に剣を向けることは出来ない」
その言葉に咲夜の眼が険しくなる。
その様子を察してレミリアは咲夜を手で静止させる。
「……だけど、人として人間に間違った道を進ませない為に出来ることはある。
オレはレミリア・スカーレットには従わない。
だけど、俺は俺として人の愚行を止める為に戦うつもりだ」
剣崎は改めてレミリアに告げる。
その剣崎の言葉に他の皆も頷いた。
「それは結局、私の頼みを聞いたことにならないかしら?」
「違うさ。俺たちは人間として誤解から戦い会おうとしているのを止めるだけだ。
君に頼まれたからだけじゃない。俺たちが決めたから戦うんだ」
剣崎は確信を持って答える。
「分かったわ……今の英雄よ。この私が許すわ。
その己の正義が赴くままに自由に戦いなさい」
レミリアは悪魔で個で行くという彼の言葉を肯定する。
「全く偉そうね。私たちが居なかったら結局、どうにもならないから勝手でも戦ってくれるだけありがたいってだけなのに」
霊夢がそんなレミリアを茶化す。
「五月蝿いわね」
そんな霊夢をレミリアは睨み返す。
「あ!だけど、無闇に人間を殺すのだけは止めてくれよ。
戦いになるからどうしても死人が出てしまうかもしれないってのは分かる。
だけど、出来るだけ……」
「分かっているわよ。貴方達に助力を頼んだ時点でそれも織り込み済み。
それでも尚、貴方たちを引き込んだほうが勝率が高いと踏んでの判断だしね」
レミリアは溜息混じりに告げる。
虐殺するぐらいの意気込みのほうがやりやすくはある。
だが、それは最も恐ろしき敵まで招きかねない行為だと分かっても居た。
レミリアの行動如何では目の前の彼らは連合・ザフトの連合軍など恐れるに値しないほどの強敵となりえるのだから。


「話し合いは終わったのか?」
紅魔館の図書室。
そこで紅茶を飲んでいた翔が降りてきたカズキに問いかける。
「あぁ、俺たちもレミリアたちと一緒に戦うことになったよ」
カズキはそう翔に告げて椅子に座った。
「元より貴方にはその選択肢以外、存在しないでしょう」
そんなカズキにヴィクトリアが憎まれ口を叩く。
ヴィクターを人に戻す白い核鉄。
それがこの紅魔館の地下で精錬されている以上、それを護るためにカズキは戦うしかないのだ。
平行世界では人と妖怪の戦争によりその研究は消失し、カズキもヴィクターも人に戻る手段を失くしていた。
「まぁ、そうかも知れないけど……」
「安心しなさい。私のアンダーグラウンド・サーチライトはモビルスーツ如きの外からの攻撃じゃ破壊されることは無いわ。
紅魔館が倒壊したとしても研究室は無事なのは保障する。
何せあのフランが暴れても大丈夫なんだから」
ヴィクトリアの言葉にカズキはその守りは安全だと心から理解できた。
「……でも、平行世界じゃ壊されたんだよな」
しかし、事実としてそのヴィクトリアの武装錬金に護られた白い核鉄は壊されていた。
ヴィクトリアが存在し、武装錬金も同じものだった以上、状態はこの世界と変わらないはずだ。
「なら、何者かが白い核鉄を破壊しようとしたのかもね」
「一体、誰が?」
「さぁ……錬金戦団じゃないかしらね」
「まさか!?」
「言い切れるのかしら?貴方は奴らに命を狙われているのよ?」
ヴィクトリアの言葉をカズキは否定できない。
「とにかく、警戒だけはしておくわ。あんたも出来るだけこちらの護りに入った方が良いかもね」
「……うん」
カズキは頷く。
だけど、不安が彼の脳裏に過ぎる。
「ま、直接の戦闘じゃそこまで訳に立てない分、オレもここの防衛に回るよ」
翔がそんなカズキに声をかける。
「そうだな。流石に翔をモビルスーツとの戦いで前に立たせるわけには行かないし、そうしてもらえると助かる」
翔の純粋な戦闘力は既に他の仲間たちとの間に大きな開きがある。
元々、そこまで強いわけではなかったが軒並み、パワーアップが果たされた結果、完全に取り残されていた。
そして、モビルスーツの持つ強力な火気を防ぐ手段の無い翔では今回の戦いは生存が難しいと言える。


「なぁ、何で剣崎さんは妖怪の味方をするんだ?」
士郎が廊下の途中で剣崎に尋ねる。
「どうしたんだ?いきなり」
剣崎は士郎の質問に驚く。
「正直、俺は妖怪の味方をするのが正しいのかって分からないんだ……
あいつらは人を食べる。
それはそれが生態だからって頭では理解してる。俺達が牛や豚を食べるのと同じなんだって……
でも、頭で理解できも感情じゃ納得できない。
人を脅かす存在は居ないほうが良いんじゃないかって考えちまう」
士郎の言葉は妖怪が大量にいるこの場に似つかわしくない言葉だ。
だが、人である以上、その疑問は常に付きまとう。
「……シンも同じ事で悩んでたな」
剣崎はそんな士郎を見て同じ悩みを抱えた少年を思い出す。
「シンもか……当然かもな。あいつはオレよりも全然先にこの世界に関わってたんだから」
話でしか聞いてなかったためにここに来るまで実感は湧いていなかったが彼が悩んでいたことは士郎に容易に想像できた。
「シンはまだ、答えを見つけてない。悩み続けることを選んだ」
「……その気持ち分かるよ。オレもこの紅魔館で過ごしてる妖怪のこと、別に嫌いじゃない」
士郎はシンの気持ちが理解できた。
「でさ、剣崎さん自体はどうなんだ?」
しかし、肝心の剣崎の心は分からなかった。
「俺は……」


「こちらが現在の人類側の戦力配分です」
射命丸文がレミリアとパチュリーに写真と資料を提供する。
「空飛ぶ鉄の船か……こうして見せられても実感が湧かないわね」
レミリアは写真に写る戦艦を見て呟く。
海に浮かぶ艦船も存在するが自力で航空する戦艦が一際、その眼を引いた。
「一切、合成なしの本物ですよ。にしても、外と切り離して随分と経ちますが人間も随分と様変わりしてるみたいですね」
「鎧を着たり、船を飛ばしたり、案外、過去に戻ってるのかも知れないけどね」
パチュリーが写真を見て呟く。
「それを言うのなら人間は神話に近づいているって事よ。
元々、油断なんかするつもりも無かったけど想像以上に危ういかもね」
「流石にこの艦隊の戦力が全て投入されるとも思えませんが余り出し惜しみはしないでしょうね。
既に街の住人の避難は完了しています。
そして、あちらは更にこちらの人里の人間の退避を提案してきています」
「それはさせられないわ」
「もちろん。幻想郷の住人に外の世界に触れられると困りますからね」
「あっちからしたらこちらは人間を人質にとってると思うのかしらね」
「だとすれば攻撃の手が緩くなるかも知れませんね。
むしろ、その方向で話を進めますか?」
「止めておきなさい。人の英雄がそっくりそのまま私たちの喉元を掻き切ることになるわ」
「ですよね~。やれやれ、彼らは私たちを救う良薬なのか、それとも私たちを殺す劇薬なのか……」
「それでも私たちが勝負を続けるために必要な手札だわ。
今までの情報どおりなら彼らの力は人間の基本的な戦力よりもかなり高いもの」
「なるほど……それでは手筈どおりに前哨戦はお願いしますよ」
文はそう言うと部屋から去って行く。
「前哨戦ね……完全に捨て駒と言う事か」
「元々、直接、妖怪の山が攻撃されないための防壁でしかない訳だしね。
もちろん、それに甘んじる訳はないけど」
レミリアは歯軋りする。
全ての運命がレミリアが感知したとおりに進んでいる。
レミリアの最も欲しない未来へと突き進んで行く。
どれだけ、操作を行おうとそれは力ずくに元の路線へと戻ろうとしていた。
「やってやるわよ……」
だが、それでもレミリアは勝負を投げ出していない。
生き残る手を見放してなどいない。


ミネルバの艦長室
そこにはギルバート・デュランダルの姿があった。
その前にはシン、レイ、ルナマリアのミネルバ所属のパイロットの姿があった。
だが、彼らを束ねるはずの隊長であるアスランの姿は無い。
「アスランの事は残念だったね」
デュランダルは彼らに対してそう切り出した。
「はい。彼は非常に優秀な人間で我々も学ぶことが多かった。
それがテロなどという卑劣な手段で失ってしまったことは我々にとって大きな痛手です。
何より、彼は私たちの仲間でした。
それを失った怒りは必ず妖怪どもを駆逐することで払います」
レイが真剣な面持ちでデュランダルに告げる。
「私もです。自分たちから和平を持ちかけておいてその場に集った人たちを殺すなんて許せません!」
ルナマリアは険しい表情で叫ぶ。
戦いへの意気込みを見せる二人。
だが、シンは納得のいかないような表情をしていた。
「シン・アスカ……やはり、アスランを失った傷は癒えないかね?」
デュランダルがシンへ声をかける。
「あっ……いえ……確かにアスランが死んだのは辛いです……
だけど、何で幻想郷側が和平を破壊したのか……それが分からないんです」
シンの言葉にレイとルナマリアは驚いて眼を見開く。
「シン!」
レイはシンの肩を掴んで叫ぶ。
「君は幻想郷について知っている。故に彼らの行動は理解しがたいかも知れない。
だが、全てを知っていた訳ではないだろう?」
議長がシンに尋ねる。
たった数度の邂逅。
それだけで全てを分かりはしないだろう。
自分が出会った一部だけがそれなりに人間に好意的だっただけかもしれない。
その総意としては人に仇なす化け物の集団なのかもしれない。
そんな懸念がシンの胸中に渦巻く。
「何故、争いあうのか……それは人間同士でも存在する問題だ。
事実として彼らは人に危害を加え、平和な解決策も炎で塗りつぶした。
もはや戦いは避けられない」
「そうだ。アスランは奴らの攻撃で死んでしまった。
それにあの場所に住んでいた人々は妖怪共の脅威から避難させられている。
住むべき場所を追われているんだ。
住む場所を人の手に取り戻す。
これはそういう戦いだ」
議長とレイは矢次早にシンを戦いへと促す。
「俺は……」
それでもシンは何処かで納得が行っていなかった。
「シン……私は君がこの戦いにおいて最も重要だと考えている」
「自分がですか!?」
シンは議長の突然の言葉に驚く。
「強大な妖怪の相手は実際に戦った君が適任だろう。
そして、何よりも。君は戦士としての資質に優れている」
「戦士の……」
「君に見せたいものがある」
デュランダルはそういうと立ち上がった。

デュランダルに案内された。
そこはミネルバの格納庫だった。
「これは……」
シンはそこに置かれている見慣れないモビルスーツを見て眼を見開く。
背中の巨大な翼が特徴的なモビルスーツだった。
「ZGMF-X42Sデスティニー……君の為に用意した最新鋭モビルスーツだ。
インパルスでは上級アンデッドとの戦いは難しいと考えて急ピッチで用意したのだが間に合わなかった。
今は最終調整段階と言ったところだが……
君にはこの新しい剣でこの戦いに参加してもらう」
「デスティニー……運命」
シンは機体を見てポツリと呟く。
「そうだ。この機体は人類の運命を護るための剣だ。
人の手にあるべき運命を取り戻す。
その為にこの力はある」
「……運命を取り戻す……」
シンはその響きに不思議と力を感じた。


時は流れ
戦いは始まりを迎えようとしていた。
「まさか、人間と戦うことになるなんて……」
士郎は山の向こうを見据えて呟く。
今は視界に映らないがその先には連合とザフトの戦艦が居るはずだ。
「そうだな……だけど、俺たちは止めなきゃならない」
剣崎はバックルを腰に装着する。
カズキもなのはもその言葉に頷く。

最初に戦線に立つ事を剣崎が提案した。
どうにかして戦いを止めようと言葉を伝えるために。
それがダメな場合、レミリアたち妖怪が戦線に立つことになる。

「いくぞ!」
剣崎は遠くに光が見えると同時に叫んだ。
そして、ブレイバックルのレバーを引く。
「変身!」
その言葉とともにブレイドへと変身し駆け出した。


ブレイドはブルースペイダーを駆り、森の中を駆けて行く。
そして、その瞳が連合の戦艦を捕らえた。
「よし!」
剣崎はジャックフォームへと変身するとブルースペイダーから飛び出し戦艦へと一気に飛翔する。
だが、そんなブレイドを撃墜しようとCIWSの火線がブレイドに対して降り注ぐ。
「待ってくれ!」
ブレイドはそれを回避しながら戦艦に取り付こうと旋回する。
この状態から言葉を届けることなどできはしない。
どうにかして戦艦内部に行く必要がある。
その入り口を探してブレイドは旋回する。
その内に戦艦のハッチが開いた。
「そこか!」
ブレイドはそれを見つけると真っ直ぐにそこへと向かおうとする。
だが、そんなブレイドに対して巨大なビームの光が浴びせられた。
「うわああ!!」
その砲撃に直撃し、ブレイドの体は吹き飛ばされる。
だが、それでも空中で何とか態勢を立て直した。
そして、戦艦のハッチから現れたモビルスーツを見て剣崎は驚く。
「お前たちは!?」
そこに存在していたのは見覚えのあるモビルスーツだった。
かつて、BOARDを襲撃した謎のモビルスーツ。
ザフトより強奪された三機のモビルスーツがそこに居た。
「連合軍が俺たちを攻撃していたのか!?」
剣崎はその状況に驚く。
BOARDを襲撃し、ホムンクルスと協力していたモビルスーツが連合として戦いに参加している。
その裏で蠢く悪意の一角を見つけたようだ。

「アウル、ステラ、一気に叩くぞ。あいつは以前までの仮面ライダーじゃねぇ!」
スティングがアウルとステラに指示を出す。
ジャックフォームは通常形態のブレイドよりも戦闘力が増している。
資料で知っていたがアビスのビーム砲の直撃を受けても大したダメージを受けていないことでそれをリアルに感じていた。
「了解。流石に気を引き締めないとね」
「大丈夫……倒す」
アウルとステラは頷き、ブレイドへと向かう。

「くそっ!」
ブレイドは迫り来るガイアをさばきつつ、カオスとアビスの攻撃を回避する。
幾らブレイドがパワーアップしていてもこのクラスのモビルスーツの連携を簡単に退けられる訳じゃない。
そうこうしている内に艦隊は先へと進んでいってしまう。
「カズキ、なのは……頼むぞ」
剣崎は後方で控えている二人に託すことにした。


「剣崎さんが突破されたみたいだ」
カズキが迫る艦隊を見て告げる。
「大丈夫かな。幾ら剣崎さんでも艦隊を相手に一人で立ち向かうなんて……」
なのはは心配そうに呟く。
敵の戦力を測る為、そして、あわよくば直接、話を通すために剣崎は一人、最初に艦隊へと向かった。
だが、それはたった一人に相当な戦力が集中する危険もあった。
幾ら仮面ライダーでも無敵ではない。
インパルスがアンデッドに通用するようにモビルスーツの武装は仮面ライダーも傷つけられる。
「彼が自分で言い出したんだし信用するしか無いでしょう。
それよりもこっちもそろそろ行かないとまずいわよ」
霊夢が告げる。
カズキ、なのは、フェイト、霊夢、魔理沙、咲夜。
それが今、この場に揃っている戦力だった。
軍を相手にするには圧倒的に少ない人数だ。
だが、それでもやるしかない。
余り紅魔館に近づかれては艦砲射撃で破壊されるかも知れないのだから。
「とにかく大砲を潰すことから始めれば良いんだな?」
魔理沙がなのはに尋ねる。
「はい。まずは火力を潰さないと紅魔館に逃げている多くの妖怪が危険に晒されますから」
「うん、砲撃ってそれだけ危険だからね」
フェイトが何処か実感が篭った様子で頷く。
「オレとフェイトと魔理沙で片っ端から壊していけば良いんだよな?」
カズキが確認の為に尋ねる。
「えぇ、私と咲夜は破壊には向いてないし、なのはには敵部隊の牽制をお願いしたいしね。
威力と機動力の高い貴方たち三人でどうにか破壊してきて」
それに霊夢が答える。
「まぁ、でかぶつなんて無粋なものにはさっさと退場願うとするか!」
真っ先に魔理沙が飛び出す。
「ちょ!もう!いくわよ!」
それに連れられるように残りも戦場の空へと飛び出した。

連合軍はその奇妙な光景に困惑する。
少女が空を飛び、奇怪な方法で攻撃を加えてくるのだ。
事前に聞き及んでいてもそれは理解しがたい光景だった。
だが、それも理性で飲み込み、即座に反撃へと転じる。
出撃する連合軍の量産型モビルスーツ・ウィンダム。
空中戦を可能とするそのモビルスーツは幻想の少女たちに牙を向く。

「ディバインバスター!」
なのはは遠く離れた距離から戦艦に対して砲撃を敢行する。
魔力の光は戦艦の脇を通り抜けて地面に着弾した。
それにより爆発が巻き起こり、空気が震える。
それに対して戦艦のビーム砲はなのはに対して火線を集中してきた。
なのははそれをプロテクションを張りつつ回避して行く。
「このまま、こっちに眼を引き付ける……」
なのはは自分のすれすれを通り過ぎる強力な熱量を感じながら呟く。
幾らなのはのバリアジャケットが防御を重視していても戦艦の砲撃を何度も耐えられるはずが無い。
故に回避に専念しつつ、隙を見て砲撃を放って脅威を示さなければならなかった。
この攻撃が紅魔館や他の仲間に向かないようにと。

そんななのはに対して一部のウィンダムが動き出す。
だが、そんな彼らの周囲に突如として無数のナイフが出現する。
それらは一気にウィンダムへと降り注ぎ、その装甲に突き刺さる。
「流石に装甲を貫くってのは無理そうね」
十六夜咲夜は片手に銀のナイフを持ちながら呟く。
魔力を込め、強化したところで所詮は銀製のナイフ。
モビルスーツの装甲を貫通するには至らない。
「なら!」
咲夜はウィンダムへと向かう。
一機のウィンダムはそれを迎撃しようとビームサーベルを引き抜き、振り下ろした。
だが、咲夜の体は突如として消える。
いや、ウィンダムのパイロットにはそう見えた。
だが、事実は違う。
咲夜は時を止めてその攻撃を回避したのだ。
「まぁ、腕の一本や二本は覚悟しなさい!
傷符【インスクライブレッドソウル】」
咲夜の瞳は赤く輝き、手にしたナイフを凄まじい速度で振るう。
その速度はウィンダムのカメラでも捕らえられない。
回避も出来ずにウィンダムのマニピュレーターとビームサーベル、そしてライフルは一気に切り裂かれた。
「殺さず倒すってのも面倒ね。弾幕ごっこみたいに当たったら終わりなら楽なのに」
咲夜は即座に自分に向けられたライフルの銃口を見ながら呟いた。

「夢境【二重結界】」
霊夢は自分の前方に結界を構築すると降り注ぐビームの雨を完全に防ぐ。
「流石に妖怪じゃなきゃお札も針も効かないわよね」
霊夢は自分の攻撃の殆どがモビルスーツに対して無力なことに嘆息する。
霊夢の能力は妖怪を封印することに特化しているのだ。
人間を相手取るのは難しいとも言える。
特に機械に身を包んだモビルスーツなど不得手でしか無い。
「でも、弱音も言ってらんないわよね」
霊夢は結界が破壊されるよりも先に移動を開始し、ビームを回避する。
視線がこちらに向いていればそれで良い。
敵を討ち、破壊する役目は他に居るのだから。

「恋符【マスタースパーク】」
魔理沙は戦艦の側面を移動しながら魔砲を放つ。
放射された魔力は破壊のエネルギーとなり砲台を破壊した。
「これでようやく二つ目か」
魔理沙は嘆息気味に呟きながら一気に加速する。
そこにウィンダムのビームライフルが火を噴き、放たれたビームが降り注いだ。
それを後ろでに見ながら魔理沙は加速する。

フェイトは高速で飛翔しながら戦艦の下部を通り抜け、側面へと抜けて行く。
「プラズマスマッシャー!」
フェイトはすれ違いざまに雷を纏った魔力の砲撃を放つ。
黄金の閃光が戦艦の主砲に直撃する。
だが、それと同時にフェイト目掛けてCIWSとウィンダムから放たれたビームが降り注ぐ。
フェイトはそれらを回避とディフェンサーにより反らしながら無傷で切り抜ける。
「ごめんなさい……プラズマランサー!」
そして、反撃の手を減らすためにウィンダムに対して魔力弾を放つ。
それらはウィンダムの装甲に直撃し、一機が地面へと落下していった。

武藤カズキは戦艦の上に着地するとサンライトハートで主砲を切り裂く。
そんなカズキに対して一機のウィンダムがビームサーベルで接近戦を仕掛けた。
カズキはサンライトハートのエネルギー刃でそのビームを受け止める。
エネルギーとエネルギーは反発しあい閃光が煌く。
「うおおおお!」
カズキはウィンダムを蹴り飛ばし、距離をとる。
相当な重量を持つモビルスーツだが錬金の戦士として鍛えられたカズキはそれを難なく吹き飛ばした。
「ごめん!」
そして、サンライトハートのエネルギーを伸ばし、距離が離れたウィンダムのマニピュレーターを切り裂く。


瞬く間に連合軍の戦艦の主砲は破壊された。
長距離攻撃手段を失い、連合軍の艦長は憤る。
「これが妖怪の力なのか……!?」
連合軍は目の前の敵を妖怪として認識していた。
資料から知られる妖怪の姿も人と殆ど差異などなかったし、目の前で見せられる力も人のそれを遥かに超えている故に仕方ないだろう。
「ええい!こうなれば切り札を投入するぞ。化け物には化け物だ!」
その力を目の当たりにし艦長は決断する。
艦隊に搭載された秘密兵器の投入を。


「これなら何とかなりそうね」
霊夢は結界を張り、魔理沙とカズキの援護をしながら呟く。
敵の戦力は殆ど減らせていないが今の所、味方に負傷は無い。
紅魔館との距離は縮まっているものの到着までにかなりの数の敵戦力を減らせるはずだ。
だが、そんな彼女の考えは戦艦より現れた存在により否定される。

「妖怪……その存在は許されない」
戦艦から現れた存在。
それはモビルスーツではない。
その姿は何処かアンデッドに似ていた。
だが、その造型は人工物を感じさせる。
「何!?」
それを見て霊夢は怪訝に感じる。
嫌な予感が霊夢の脳裏に移る。
その存在は右腕のアームガンを霊夢へと向けた。
霊夢はそれを回避すべく機動する。
だが、その動きを予測していたかのように放たれた弾丸は霊夢の体を捉えた。
「なっ!?」
その正確無比な射撃に霊夢は戦慄する。
幸いにも威力はそこまで高くないのか結界で防げているが逃れられなければその防御が何時まで持つかは分からない。

「こいつは……剣崎さんを狙っていた怪人!?」
カズキは戦艦の上でかつて剣崎を狙い襲い掛かってきた怪人と相対する。
「武藤カズキ……貴様は許されない!」
怪人は触手のようにコードを伸ばしカズキを拘束しようとする。
「言いがかりを!」
カズキはそのコードをサンライトハートで切り裂く。
だが、その隙をついて怪人は接近戦を仕掛ける。
「ぐっ!」
カズキは怪人の拳をサンライトハートで受け止めるがその衝撃に体は吹き飛ばされる。
「パワーはアンデッド並み……いや!それ以上!?」
カズキはそのパワーに驚く。
剣崎が倒している相手とは言え、雑魚として構うわけにはいかない。
「錬金の魔人……捕獲する!」
だが、そんなカズキに対して別方向から弾丸が飛ぶ。
「くっ!」
その射撃にカズキは反応するも回避しきれず腕をかすり、鮮血が飛び散る。
「もう一体居たのか!?」
カズキはその姿を見て叫ぶ。
それは今まで剣崎を狙っていた怪人とは別の怪人だった。

「嘘……」
フェイトは戦慄する。
目の前に展開するのはウィンダムだけではない。
正体不明の怪人がフェイトを狙ってアームガンを向ける。
その数は一体だけではない。
無数の怪人がフェイトに向かってアームガンを放った。
凄まじい連射を誇りながら、その弾丸は正確無比にフェイトを捉える。
「くっ!」
フェイトは高速飛翔で回避しようとするがまるで動きが分かっているかのように弾丸はフェイトに浴びせられる。
ディフェンサーにより、それらを防ぐが無数の弾丸を防ぎきれない。
「下がってなさい!」
その横を霊夢がすり抜けていく。
そして、自身が囮になるように艦隊上の怪人に対してホーミングアミュレットを飛ばす。
「霊夢!」
その姿を見てフェイトが叫ぶ。
敵の射撃技術と数では幾ら回避が得意な霊夢でも無謀が過ぎる。
「大丈夫よ」
だが、霊夢は余裕の表情を見せる。
それもそのはずだ。
怪人の放つ弾丸も、ウィンダムのビームも霊夢の体をすり抜けていく。
【夢想天生】
それは敵の攻撃を無意味にし、自身の攻撃を通す反則技。
「動きを止めるわ。その内に撤退よ!」
しかし、その効果時間はそこまで長くは無い。
攻撃がそこまで通用しない霊夢に出来るのは時間稼ぎぐらいだ。
「神技【八方鬼縛陣】」
霊夢は一気に怪人たちに近づくと敵の動きを止める結界を展開する。
広範囲に展開されたその結界は怪人とモビルスーツの動きを止めた。
「今のうちよ!」
そして、その隙に一気に霊夢は離脱する。
それに続いて全員が連合の艦隊から離脱を開始した。


「霊夢たちは一旦、紅魔館に戻ってくるみたいよ」
その動きを察知した鈴仙がレミリアとパチュリーに告げる。
「あいつらでもあの数は押し切れないか……でも、予想よりも早いわね」
レミリアも彼らだけで戦いに決着が着くなどとは思っていなかった。
だが、それでも撤退までの時間が早すぎる。
もう少し粘ってもらわなければ準備も整わないと言うのに。
「何でも予想外の敵が出たみたいね。
随分と慌ててるみたいだったし」
「秘密兵器って所かしらね。そんなモノまで投入するなんて随分と買われてるみたいよ」
パチュリーがレミリアに告げる。
「奴らにとっても前哨戦でしょうに……そんなモノまで切ってくるなんて光栄ね」
レミリアは口ではそう言うが内心ではそこまでの余裕は無い。
数で負けてる上に霊夢達に撤退を決断させるような増援。
状況は悪いほうへと向かっていく。


霊夢たちは紅魔館の庭へと着地する。
その周囲は赤い霧に包まれていた。
「あんまり散布が進んでないみたいね」
咲夜がその状況を見て呟く。
「お嬢様も急いでいるみたいですが何分、昼間ですから」
それを出迎えた紅魔館の門番である紅美鈴が答える。
「私達の撤退も早かったしね……戦艦の足を止めるまでいけなかったのは痛いわね」
霊夢は一息ついて呟く。
主砲の破壊の後、戦艦の推進機関を出来るだけ破壊する予定だった。
だが、それを行うよりも先に怪人の増援により撤退を余儀なくされてしまいそれは出来ていない。
「それにしてもあれは何だったんだ?アンデッドに似てたけど……」
魔理沙はその怪人について話を切り出す。「
パワーも耐久度もモビルスーツとは段違いだった。
最後の霊夢の一撃も怪人相手には殆ど通用してなかったように見えた。
「一部は前に剣崎さんを攻撃してたのだけど……もう一体は分からないな。
それに一体でも厄介だってのにあんなに数が居るなんて」
怪人の最大の問題はその数だった。
量産型のモビルスーツと同じようにあの怪人は数を揃えている。
「一体一体も強力だしな……こりゃ、勝ち目はないぜ」
魔理沙は嘆息する。
そんな魔理沙を咲夜は睨みつけた。
「弱音なんて吐かないでもらえないかしら。なんとしても私達はあれを全滅させないといけないんだから」
咲夜の語気が強くなる。
彼女も内心で苛立ちが募っているのだろう。
「じゃあ、お前に何か策でもあるのか?
幾らレミリアやフランでもあの数をどうにかできるとも思えないが」
そんな咲夜の態度に魔理沙も感染したのか洗い語気で返す。
一瞬にして険悪な空気が生まれた。
「落ち着いて下さい!今は仲間割れなんてしてる場合じゃ……」
その間になのはが割ってはいるがギスギスとした空気は続いた。
「……そう言えば剣崎さんは?」
カズキはその場に剣崎が居ないことに気づく。
「結局、先行して戻ってきてないわ」
それに霊夢が答える。
剣崎一真はカオス、アビス、ガイアに押さえ込まれ合流することは適わなかった。


「連合軍が敵の先発隊を撃退したようね」
ミネルバの艦橋で艦長のタリアが呟く。
ミネルバとザフトの艦隊は連合軍の後方で待機していた。
連合軍のごり押しにより今回の作戦は連合主体で動いている。
ザフトは自由に参戦できる状態に無かった。
「……」
シンはその戦いの映像を見て押し黙る。
「……敵の先発隊。あれがお前がこの地で一緒に戦っていた仲間なのか?」
レイがそんなシンの様子に気づいて尋ねた。
「あぁ……あいつらは妖怪側に付いたのか」
シンとしても予想していた事態ではある。
だが、それでもかつての仲間と敵対していると言うのは良い気分では無かった。
「しっかりしろ。かつての仲間だったとしても今は妖怪に手を貸している以上、敵だ。
迷っていては負けるぞ」
「分かってるさ!」
シンはそう言い捨てて艦橋から出て行く。
「シン!」
その後をルナマリアが追いかけて行く。
「シンは戦えるのかしらね……」
タリアは心配そうに呟く。
「戦ってもらわなければ困ります。
シンの力はあの妖怪たちを倒すのに必要なんですから」
レイは特に動じている様子もなく淡々と告げた。


「トライアルシリーズ……最新型の生体兵器と聞いていたが凄まじい力だな」
艦長は投入された怪人が妖怪側の先発隊を撃退したのを見て呟く。
モビルスーツを物ともしない力を持つ妖怪の軍勢をトライアルは圧倒していた。
「ふふふ……これなら行けるぞ」
艦長はこの戦いの勝利を確信していた。


「来た!」
カズキが叫ぶ。
湖を超えてウィンダムの軍勢が紅魔館へと押し寄せる。
「あの怪人の姿が無い?」
霊夢は怪訝に感じる。
飛行能力は有していなさそうだったから仕方が無いとは言え、あれ程の戦力が投入されていないとは考えづらい。
だが、その疑問は直ぐに解消された。
湖より一斉に怪人が飛び出す。
そして、島へと上陸し行進を始めた。

「まずはあの怪人を倒す。フェイトちゃん、魔理沙さん、準備は?」
なのはがレイジングハートエクセリオンを構えて両脇の二人に尋ねる。
「問題ない!」
「あぁ、何時でも良いぜ!」
フェイトも魔理沙も各々の獲物を構えて行進するトライアルに狙いをつける。
「ディバインバスター!」
「プラズマスマッシャー!」
「恋符【マスタースパーク】」
三つの砲撃がトライアルシリーズに浴びせられる。
凄まじい爆発が起こり、衝撃と風に三人の髪とスカートがなびく。
「やったか!?」
魔理沙が叫ぶ。
爆発の後、その視界の先に倒れるトライアルシリーズの姿があった。
だが、その体は即座に再生をしていき、何事も無かったかのようにむくりと立ち上がった。
「なっ!?」
「不死身……アンデッドだとでも言うの」
高い戦闘力に加え、死なない体。
もし、それが事実なら勝ち目など……
「諦めるな!」
カズキが飛び出す。
向かってくるトライアルEのアームガンをサンライトハートで防ぎながら、真正面から軍勢へと挑む。
「うおおおおおお!!」
生体エネルギーを放出し、カズキの体が加速する。
そして、一体のトライアルEに対してその槍の穂先が貫く。
「お前達の好きに……させるかぁ!!」
カズキは展開したサンライトハートの刃でトライアルシリーズを薙ぎ払う。
その攻撃に一気に四体のトライアルEが倒れた。
だが、即座に起き上がる。

「やっぱり、死なない……だったら、起き上がれなくなるまで倒せば良い!」
なのはも意を決すると軍勢に対してディバインバスターを放つ。
巨大な閃光が押し寄せるトライアルDを飲み込み吹き飛ばした。
「まっ、やるだけやるしかないよな」
「そうだね。この刃が折れるまで抗ってみせる!」
魔理沙もフェイトもその姿に鼓舞され闘志を燃やす。

戦いは混戦となった。
押し寄せるトライアルシリーズ。
どうにかそれを押しとどめようと戦うもその力と数に次第に押されていく。
既に門は突破され、中庭にトライアルシリーズは押し寄せていた。
ウィンダムの軍勢も空中より紅魔館に対して攻撃を仕掛ける。
放たれるミサイルがレンガの屋敷を襲うがそれらは霊夢と咲夜により防がれた。
また、鈴仙の見せる幻覚はウィンダムのパイロットを混乱させ無力化していく。
しかし、最大の問題のトライアルシリーズには彼女達の力も及ばない。

「倒れろ!」
カズキはトライアルEのアームガンを叩き伏せる。
だが、その隙に左腕の棒がカズキの体に叩きつけられた。
それと同時に流れ出す電撃がカズキの体を駆け巡る。
「ぐああああああ!」
その衝撃にカズキは弾き飛ばされる。
「カズキさん!」
なのはも援護に向かおうとするがトライアルEの放った弾丸がなのはを襲う。
「きゃああ!」
意識の隙をついた一撃がなのはのバリアジャケットを貫き、負傷させる。

距離があれば正確な射撃。
接近戦も相当以上にこなせる技量。
トライアルEの戦闘力はこれまでのアンデッドよりも上。
上級アンデッドに近かった。
それが数で押してくるのである。
敗北は時間の問題と思われた。

「このままじゃ……」
咲夜は青ざめる。
既に体力も魔力も底を尽き始めようとしていた。
だと言うのにトライアルシリーズは一体も欠けてはいない。
ジリ貧である。
「だらしないわね」
その時、咲夜に声がかけられる。
その声を聞いて咲夜は安堵した。
周囲は気づけば赤い濃霧が覆っている。
既に太陽光は届かず、薄暗い空気が広がっていた。
「主を戦線に担ぎ出すなんてね……まぁ、後は任せなさい」
レミリアは自らの赤き魔力を槍の形に固定する。
「神槍【スピア・ザ・グングニル】」
そして、それはトライアルEに向かって投擲した。
神速……
それは一瞬にしてトライアルEに突き刺さり、その体を貫通して吹き飛ばす。
しかし、それでもトライアルは死なない。
傷は高速で再生し、動きを取り戻す。
「すごーい!本当に壊れないんだ!」
その様子を見てこの場の空気にそぐわない明るい声が響いた。
その声の主、フランドール・スカーレットは新しい玩具を見つけた子供のように瞳を輝かせる。
それは比喩ではなく、まさしくその光景を写しているに過ぎない。
「全力でやっちゃって良いんだよね?」
「もちろんよ。それじゃ、吸血鬼(アンデッド)と不死生物(アンデッド)の戦いを始めようか」
吸血鬼姉妹はそのもてる力を存分に発揮し、トライアルシリーズを蹂躙し始めた。

スカーレット姉妹の活躍は凄まじく瞬く間にトライアルシリーズを押し返す。
特にフランドールの力は凄まじかった。
彼女の全力の一撃はトライアルシリーズの再生能力を超え、その体を完全に破壊する。
その余波で庭は吹き飛び、壁など形を残していないが……
それでも二人の参戦で一気に事態は好転した。


「凄いな……これならどうにかなりそうだ」
士郎はその光景を遠巻きに見ながら、ウィンダムの相手をしていた。
ウィンダムのパイロット達はスカーレット姉妹を完全にトライアルシリーズに任せて他の敵を相手にしている。
当然だ。
彼らも人間。死にたくは無い。
「もう、諦めろ!事情も知らず、ただ命令で戦ってるお前達じゃ俺達に勝てはしない!」
士郎は投影したブレイラウザーでウィンダムのビームライフルを切り裂く。
真正面からで分が悪いとは言え、濃霧に隠れて先手でビームライフルさえ潰せれば士郎と言えども勝ち目はある。
それに相手はレミリアたちに恐怖し動きが鈍っているのならなお更だった。
「くそ……化け物が!」
ウィンダムのパイロットが吐き捨てるように叫ぶ。
その言葉に士郎は少し心が痛むが仕方は無い。
今の自分は了解しているとは言え化け物の味方をしているのだ。
「恐いなら逃げろ。逃げるって言うなら追いはしない!」
士郎はブレイラウザーをウィンダムに突きつける。
それを見てウィンダムはその場から飛び去ろうとした。
だが

「ダメだよ。敗者はきっちりと死んで退場しなきゃ」

何かがウィンダムを両断する。
爆発四散する機体。
中のパイロットの肉体ごと、装甲は炎に包まれ、バラバラになって地面に落ちる。
「なっ!?」
その光景を見て士郎は凍りつく。
濃霧の向こうに見える影。
黄金の肉体と巨大な剣を持つ異形の存在。
「やれやれ、人間が圧倒的過ぎてどうしようかと思ったけど……
意外とこの時代の妖怪も頑張るものだね」
コーカサスアンデッドは余裕然とした様子で遠くに見える爆発を見る。
「キング……何故、お前がここに!?」
士郎がその姿を見て叫ぶ。
「当然だよ。何せこの戦いはゲームの行く末を決めるターニングポイント。
僕だけじゃない。多くの存在がこの戦いの行く末を見守っている」
「ターニングポイント……お前は何を知っているって言うんだ?
この世界の運命……それすらもお前は……」
士郎はキングの物言いに何かを感じる。
聖杯戦争を利用し、破滅の存在を蘇らせ、間接的に幻想郷を破壊した男。
彼の行動は他のアンデッドとは一線を画している。
他のアンデッドが忌み嫌うジョーカーや破滅の存在すらも利用する。
それでも本人は自らに課せられた使命である筈のバトルファイトすらも遊びのように真剣に取り組んでいない。
彼が何を目指しているのか掴めない。
だが、彼が自分たちの知っている事実とは違う何かを元に行動していると言うのなら。
アーチャーの語る運命。
この男はその存在を……
「なるほど……確かにそろそろ君達もそこに届く段階か」
「何?」
だが、キングの返答は更に士郎を困惑させる。
「知りたげれば自らその手を伸ばしてみるんだね。
既に君達は全てを知るための手段を持ちえているんだから」
「どういう意味だ!?」
「それぐらい考えなよ……僕には僕のやりたい事がある!」
キングはそう言うと士郎を無視して駆け出した。
「待て!」
士郎はその後を追う。


連合軍側は戦慄していた。
投入されたトライアルシリーズの大半が既に二人の吸血鬼によって壊滅させられている。
その内の一人は事前の情報から姿が確認されていた相手だった。
だが、それでも数で押せば勝てると踏んでいたのだ。
「化け物め……」
言葉が出ない。
もはや、戦局は連合軍側の敗北へと傾いていっている。
「艦長!高速で何かが接近してきます!」
その時、オペレーターが何かを発見し叫ぶ。
「何!?」
「数は1……か、怪人!?」
その姿を確認してオペレーターが叫ぶ。
映像に映し出された金色の姿。
その姿が持つ威風にブリッジの人間は気圧される。
「対空砲火!奴を打ち落とせ!」
艦長の叫びと共に残されたCIWSがキングに向かって放射される。

キングは向かってくる弾丸を全て盾で防ぎ、何事も無かったかのように戦艦の上に着地した。
「人と妖怪の争い……それを激化させるために人間は誰も死ななかったなんてシナリオはダメなんだよね。
どちらも程よく死んでくれないと盛り上がらないからさ!」
キングはオールオーバーを引き抜き、ブリッジに向けて振り下ろした。
コーカサスアンデッドの一撃は戦艦の装甲を容易く切り裂き、一撃でブリッジを両断した。


「嘘……だろ……」
士郎は湖に落ちていく戦艦を見て呆然とする。
あの船に乗っている人間のどれだけが死んだというのか。
士郎はそれを見て居ても立ってもいられずに湖に飛び込もうとする。
だが、その腕を掴んで止めるものが居た。
「放せ!」
士郎が叫ぶ。
「止めろ。今飛び込めば波に押し流される!」
士郎を引き止めた人物。
相川始の言葉に士郎は立ち止まる。
「相変わらず後先を考えないのね」
その後ろからイリヤが士郎に声をかけた。
更に彼女はバーサーカー……ヘラクレスの肩に乗っていた。
「イリヤ……何でここに?」
士郎は彼女達の登場に困惑する。
彼女達はこの戦いに参加しないはずだった。
やるべき事があるとして帰ったはずだったのだ。
「事情が変わったのよ。詳しい事は後で話すはそれよりも今はここから離れましょう」
イリヤは指差す。
今にも戦艦は湖面に叩きつけられようとしていた。


「連合の艦隊が撃沈されたって本当ですか!?」
シンは報告を受けて動転する。
「えぇ、瞬く間に撃沈。更にモビルスーツ部隊も多くの被害が出ているわ。
既にザフトに援護要請も出ている。
あなた達も直ぐにでも出撃できるように準備しておきなさい」
しかし、シンの耳にはタリアの命令は入っていなかった。
無意識に彼らなら人死にを出さないで戦うと思っていた。
だが、実際に戦艦は落とされている。
「くそぉ!!」
シンは思い切り壁を叩いた。
その怒声にブリッジのクルーは一斉にシンを見る。
だが、シンはそんな視線を気にせず、外へと駆け出した。


「そんな……」
駆けつけた剣崎は沈んでいく戦艦を見て無力を噛み締めていた。
爆沈し、その衝撃に吹き飛ばされた波は紅魔館のある島を押し流している。
剣崎は自分が足止めされたことを悔やんでいた。
一人で何でも出来るつもりになって先行したことを悔やんだ。
「オレのせいだ!」
剣崎は紅魔館へと急行する。


「何だっていうのよ……」
レミリアは紅魔館の上で歯噛みする。
突如として押し寄せた波。
流れる水を渡れない吸血鬼はそれから逃れるしかなかった。
だが、その為に波に巻かれながらもトライアルは紅魔館へと進入してしまっている。
「誰が船を……あいつらがするとも思えないし、自ら沈んだ……そんな馬鹿な」
レミリアは事態が悪化したことに苛立ちを覚える。
運命が全て自分を殺しにきているように感じられた。
「私は……ここで滅びるって言うの……」
「そうだよ。これから先の世界に君は不要だからね」
突如として上空よりコーカサスアンデッドが舞い降りる。
「……アンデッド。まさか、お前が!?」
レミリアはキングを睨み付ける。
「そうだよ。人間と妖怪、どちらの戦力も削る良い案でしょ」
キングはレミリアをあざ笑う。
その発言にレミリアは切れた。
「貴様ぁ!!」
怒声と共にキングへと襲い掛かる。
眼にも留まらぬスピードの踏み込み。
だが、次の瞬間、レミリアは鮮血を流し地面を転がった。
「カテゴリーキングを他の上級アンデッドや模造品なんかと一緒にしてもらっちゃ困るな。
生命の頂点に立つ四つの王の一人。
たかだか、吸血鬼の小娘が超えられるはず無いじゃない」
キングはあざ笑いレミリアを見下す。
「ぐっ……あんたが生命の王なら私は夜の女王よ……負ける気は無い!」
レミリアはスピア・ザ・グングニルを生成し、キングに放つ。
だが、それはキングの盾に防がれた。
霧散する赤い魔力。
「ちっぽけだね。それで王を名乗るの?
カテゴリーキング以外で王を名乗れたのは歴史上ただ一人だ。
君にそこまでの力は無い」
キングはレミリアの尊厳を踏みにじるようにその体を踏みつける。
「ぐっ……」
レミリアは殺意の眼でキングを睨み付ける。
「睨むしか出来ないのかい?」
キングはじわじわと力を込めて行く。

そんなキングの背中にビームが放たれた。
「化け物が!死ね!」
ウィンダムはこの事態をチャンスだと奇襲を仕掛ける。
だが、そのビームはコーカサスの表面で弾けた。
直撃を受けても無傷。
アンデッドの頂点に立つ存在を傷つけるには圧倒的なまでに力が足りなかった。
「へぇ……それじゃ、まずは君達から殺してあげるよ!」
キングはウィンダム目掛けて跳躍する。

「させるかぁ!」
それに割り込み、ブレイドがキングのオールオーバーの直撃を受ける。
「うわあああ!!」
その一撃にブレイドは叩き落され、紅魔館の屋上に落下した。
そして、衝撃とダメージに変身が解除される。
「ブレイドか……弱い人間を護ってダメージを受けるなんて馬鹿だね」
キングはゆっくりと剣崎へと歩み寄る。
剣崎は必死に立ち上がる。
「俺は人を護る……その為ならこの体がどれだけ傷ついたって構いはしない!」
剣崎はキングを睨み付ける。
「人間の全てを背負うつもりなのか?
あの人間は今では君の敵だったはずだ。
それすらも護るって言うのか?」
「当然だろ!目の前で死にそうな人が居たら助けるのは!」
「なら、何故、君は妖怪の味方をしてるんだ?
人を救うならそこの吸血鬼も殺したほうが良いだろ。
何せ妖怪は人を襲う。それが宿命だからだ」
キングが倒れるレミリアを指差す。
「そうかも知れない……人を救うなら俺は彼女も倒さないとならない筈だ」
剣崎はキングの言葉を肯定する。
しかし、それでも強い意志を持った瞳で剣崎はキングを睨みつけた。
「でも、俺はそれでも彼女も救いたい!」
そして、言い切った。
「何故だい?理解できないな……人を救うはずの騎士が何故、人に仇なす存在を救おうとする?」
「ただ、生きたいだけなんだ。
誰だって死にたくない、救われたい。
誰だって変わらない。
人間だって、妖怪だって同じだ……
どうしようもない死が目の前に迫っていて、自分じゃどうしようもなくて……
だから、俺は助けて欲しいという声があるなら助ける。
一緒に生きたいという思いがあるのなら手を貸す。
戦えない全ての人たちの代わり、共に戦う仲間の為に俺は戦う!」
それが剣崎一真の生き様だった。
救える者を全て救い、あらゆる困難の矢面に立ち、運命を切り開く。
その生き様は剣そのものであり、その魂は熱く研ぎ澄まされていた。
「変身!」
剣崎は改めてブレイドに変身する。
そして、カードホルダーを展開した。
「させはしない!」
しかし、キングは剣を振るうとブレイラウザーのカードホルダーを破壊する。
「しまった!」
ラウズカードは散らばり、風に乗って落ちて行く。
「カードが無くては戦えはしないだろ!」
キングはブレイドへと襲い掛かる。
「くっ!」
ブレイドはブレイラウザーでオールオーバーを受け止める。
しかし、パワーは圧倒的にキングの方が上だ。
一撃にブレイドは怯み、その隙にキングの猛攻が続く。

「剣崎さん!」
そこに士郎が駆けつける。
「増援か……だが、役立たずだったようだね」
キングは士郎をみてあざ笑う。
彼が加わっても自分の勝利は揺ぎ無いものだと。
「くっ……」
士郎も自分の力不足を知っている。
アンデッドの、それも最上級ともなれば自分が出来ることなど殆どありはしない。
だが、それでも手をこまねいてみている訳には行かない。
「俺は剣崎さんの仲間なんだ……この世界の剣崎さんをあの世界のように失わせるわけにはいかない」
あの世界を垣間見て、強くなりたいという思いは更に強くなっていた。
何も出来ず、大切な人たちを失う未来など否定するために。
せめて、あのいけ好かない赤い外套の男と同じだけの力を手にしなければならない。
やって出来ない筈等無いのだから。
彼が見せてあの魔術を
同一の存在ならば出来るはずなのだから。

―――体は剣で出来ている

士郎は詠唱を開始する。
あの平行世界であいつが見せた奥の手。
自身の心象風景で世界を塗りつぶす魔術。
固有結界
同じ魔術は再現できるはずだと士郎は魔術回路を最大稼動させる。

血潮は鉄で、心は硝子。
幾たびの戦場を越えて不敗。
ただ一度の敗走はなく、
ただの一度も理解されない。
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。
故に、生涯に意味はなく。
その体はきっと、剣で出来ていた。

完成する魔術。
それは世界を塗りつぶす。
空に歯車が回る、剣の丘。
荒涼たるこの世界こそ、衛宮士郎の心の世界。

「これほどの魔術を使うなんてね……侮ってたみたいだ。
だけど、それでどうするんだい?」
キングは固有結界を見て驚いてみせる。
しかし、それでも彼の余裕は剥がれない。

「無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)」
士郎の視線は真っ直ぐにコーカサスアンデッドの持つ剣に向けられていた。
この固有結界の特性は士郎のストックしている剣を即座に投影することと
視認できる刀剣すらも即座に投影できること。
スペードのキングの持つ剣。
神々が生み出した神話にも残らない剣・オールオーバー。
それを通常の士郎がトレースし、投影することは出来ない。
だが、固有結界内であればそれは別である。
士郎の手にオールオーバーが出現する。
「これを使え!ブレイド!!」
士郎はそれを剣崎に向かって投げた。

剣崎はそれを掴み取る。
右手にブレイラウザー、左手にオールオーバー。
人の英知が生み出した剣と神々の生み出せし剣。
その二つを携え、騎士の英雄は悠然と構える。
「士郎……君の力は受け取った!」
剣崎は二つの剣を振るい、一気にキングを攻める。
矢次早に繰り出される連撃。
その攻勢をキングは裁ききれずにオールオーバーを弾き飛ばされる。
「カードの力が無くたって……共に戦う仲間が居れば倒せるはずだ!」
ブレイドはオールオーバーをキングの盾に突き立てる。
キングの体を護る強大なる盾。
全ての攻撃を防いできた絶対の防御。
だが
「ブロークン・ファンタズム!」
士郎は叫んでいた。
奴が持つ最強の矛と盾。
それならば絶対の防御すらも砕けるのだと。
オールオーバーは爆発し、その衝撃に盾は吹き飛ばされる。
そして、その無防備な体目掛けて、煙を払いブレイドが駆ける。
「仮面ライダーの力なら!」
剣崎はブレイラウザーを振り下ろし、キングの体を切り裂く。
装甲は切り裂かれ、緑色の血が吹き出る。
「まだ……!」
だが、それでもキングは倒れない。
「うおおおおおおお!!」
しかし、ブレイドの攻撃も終わりではない。
ブレイラウザーを投げ捨て、ブレイドは飛び上がる。
「ライダーキック!!」
流れるアンデッドの力を全て右足に集中させ、キングへと叩き込む。
その衝撃に装甲は砕け散り、キングのバックルが開いた。
「……ははは、君に僕が使いこなせるかな?」
キングは自身の敗北を知り、ブレイドに声をかける。
だが、ブレイドはそれを無視し、プライムベスタをキングへと投げつけた。
「ブレイド……これからが君の本当の戦いの始まりだ」
そして、その体は封印される。
これにより、スペードスートの全てのアンデッドは封印された。


その頃、地下の図書室
「生憎だけど……ここから先へ行かせる訳にはいかない」
翔は命の剣を構え、侵入者と対峙する。
「ダメですよ……黒い核鉄の力。私が貰い受けるんですから」
間桐桜は陰を伸ばす。
そして、その陰から一人の騎士が姿を現した。
その姿に翔は目を見開く。
「馬鹿な……あんたは過去に帰ったはずだ……セイバー!!」
黒き鎧に身を包んだ騎士王。


そして、運命は覚醒する。

前へ

一覧へ戻る

次へ