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翌日、衛宮家
そこに仲間たちは全員、集まっていた。
それはイリヤの願いによるものだった。
「下手をすればこのまま世界は滅ぶ」
彼女はそうとしか言わなかった。
何が切欠なのか、何が原因なのか、何をするべきなのか。
それは全員が集まってからじゃないと応えられないと告げる。
それを受けて彼らは一同に会した。

「一体、何が起きたんだ?」
詳細を聞こうと橘がイリヤに尋ねる。
頑なに話さなかったイリヤはようやく、話を始める。
「カテゴリーKと思われるアンデッドと黄金のサーヴァントに襲われたわ。
始とバーサーカーが戦ったけれど全く、相手にならなかった」
イリヤの言葉に全員が愕然とする。
新たなカテゴリーKの出現。
それも嶋昇と違い、明確に敵対関係として。
そして、正体不明の八番目のサーヴァント。
それらの存在の不確定さもある上にその二人は始とバーサーカーという二人を相手に勝利した。
始とバーサーカー。その二つの力を知っているが上にそれは明確な脅威と分かる。
「昨日から気になっていたけど……その、サーヴァントは何者なの?」
凛がイリヤに尋ねる。
「分からないわ。だけど、サーヴァントなのは確実よ」
「ただでさえ、イレギュラーだらけの聖杯戦争なのに……」
凛は頭を抱える。
「良いじゃない。今まで漁夫の利で生き残ってきた貴方に敵が出来たんだから」
「む……」
イリヤの棘のある言葉に凛はむすりとするが言い返せない。
何気に今まで戦闘に参加していないのは事実だ。
「そいつの名前はギルガメッシュ。前回の聖杯戦争のアーチャーだったサーヴァントだ」
今まで黙し続けて来たアーチャーが突然、姿を現し、告げる。
「アーチャー!?」
それに凛が驚く。
「前回のアーチャーだと……まさか、あいつは確かに死んだ筈です」
セイバーもアーチャーの言葉に反応する。
「そもそも、何で貴方はそんな事を知っているの?」
イリヤはアーチャーに尋ねる。
「さてな……だが、あいつは強敵だ。それもカテゴリーKと結託していると言うなら今までのどんな敵よりも強大と言える」
しかし、アーチャーはその質問を拒絶する。
「確かにそうね……凛はそれで良いの?」
イリヤは凛に尋ねる。
アーチャーは彼女のサーヴァントだ。
故に彼に対する決定権は彼女にあると言える。
「そうね……令呪を使って強引に聞き出すって手もあるけど……」
凛は真っ直ぐにアーチャーを見つめる。
「あんたは戦う意思はあるのよね?」
「もちろんだ。ギルガメッシュもランサーも……セイバーが相手だろうともな」
アーチャーは視線をセイバーに向ける。
その視線にセイバーは身構える。
「アーチャー!」
士郎はその言葉に対して叫ぶ。
「当然だろう。聖杯戦争は最後の一人になるまで続く……
最後の二人になったなら俺とセイバーのどちらかが勝者となるまで戦わなければならない。
だが、凛が同盟を続けるなら俺はそれに従う」
アーチャーはあざ笑うように士郎に告げる。
「それは……」
「そうね、確かにその通りだわ。だけど、それは全部が終わった後で良い。そうでしょう」
凛は士郎の肩を叩く。
「……分かった。今はそのサーヴァントとアンデッドを倒すのが先決だ」
「そうよ。今、あいつらを放置するのは聖杯戦争どころじゃない」
そこにイリヤが割り込む。
「気になっては居たが……どうして、そこまで危機感を感じているんだ?」
橘がイリヤに尋ねる。
イリヤの様子は尋常ならざるものだった。
しかし、イリヤは口ごもる。
「相川始……奴は何者だ?」
パピヨンはそんなイリヤを見て、質問をぶつける。
「答えられないのか?」
「いえ……話すわ。と、言っても私も全てを知っている訳じゃない」
イリヤは一つ、深呼吸をして、全員を見渡す。
視線はイリヤに集中していた。
「始はアンデッド。それは知っているわよね」
「あぁ」
「その中でも始は特別なのよ。ジョーカーアンデッド……それが始の正体よ」
「ジョーカー……他と違うって分かってはいたけど……」
それは衝撃的な告白だった。
だが、どこかで予感はあった。
始の持つ力は他のアンデッドとは明らかに違っていた。
他のアンデッドの姿を借りる。
そんなものが下級アンデッドの力である筈が無い。
「それと……気づいてないみたいだから、今の内に言っておくけど……。
始の人間の姿……あれが何を示すのか……」
イリヤの話し始めた言葉に全員が息を呑む。
剣崎や橘はどこかで予感は感じていた。
始がアンデッドだと気づいて、そして、彼がラウズカードの力でアンデッドの姿に変身するのを知って。
それじゃ、始がラウズカードを使って人間の姿に変身するのは何故なのか……
「ハートの2.スピリット……ヒューマンアンデッドが始の人間の姿よ」
それは既に人間の祖は今回のバトルファイトに敗退していると言う事。
もはや、目指すべきはもはや、全てのアンデッドの封印しかない。
仮面ライダーの勝利なくして人類に未来は存在しない。
「それが危機って事なのか?」
士郎がイリヤに尋ね返す。
だが、それをイリヤは首を振って否定する。
「そんな事、大した問題じゃないわよ。
問題なのはジョーカーが奴らに捕まったことよ。
奴らはジョーカーの存在を分かって始を捕まえた。
私の推測が正しいなら目覚めることになるわ」
「……何が?」
「破滅の存在よ」







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第三十一話「破滅の呼び声」






ジョーカーアンデッドはバトルファイトのイレギュラー存在。
ジョーカーアンデッドは原初の生命より別れし52のアンデッドの一つではない。
53番目のアンデッド。
それは無祖。
無限の生命を持ちながらにして、生命を否定する存在。
アンデッドシステムが持つ、生の正反対の位置にする死の象徴。
それがもたらすものは命の繁栄では無い。
死の侵食……星の命を絶滅させる。
終焉のアンデッド。

「随分とまぁ、大業な名が冠せられたモノだな」
ギルガメッシュは台座に寝かされるカリス……相川始を見下ろす。
「かつて、神々は星の生命を52に分けて、アンデッドを生み出した。
そして、アンデッドはそこから地球全ての生命を生み出した。
仮にそれをアンデッドシステムと呼ぶとしよう。
破滅の存在は神々の隙を突いて、それを使用し、自らの眷属となるアンデッドを作り出した。
自らが持つ、無限の死の一つを取り出して」
「それがジョーカー……なるほどな。確かに忌むべき存在だ。俺にとってもな」
「なら、ここで封印する?こいつもアンデッドだから封印は可能だ。
事実として一万年前はヒューマンアンデッドによってジョーカーは封印された」
「なるほどな。だが、まだ、聞いていない。
お前が何をしようとしているのか?
まさか、封印を完全に解除して世界の破滅を望むか?
流石に我もそれに付き合うつもりは無いぞ。
世界は我のモノだ。
それを破壊されては困る」
「僕のしたいこと……それは一つだけだ。
このゲームを無茶苦茶にする。
今のままにゲームが続くだけじゃ面白くない」
「余興か……?」
「あぁ、ジョーカーの覚醒はバトルファイトを変える」
「下らないな。まさか、その程度の事に俺を付き合わせたのか」
興味がなくなったのか退屈そうな表情をギルガメッシュは見せる。
「話を聞くだけよりももっと、面白いと思うけどね」
「お前の企みなどどうでも良い。
だが、そうだな。しばらくすれば止めにセイバーたちも来るだろう。
そろそろ、聖杯戦争も終わらせる頃合だ」
「そうだね。丁度良い。この場所なら直ぐにでも聖杯は手に入る」
キングは不適に笑う。


探索開始の為に皆はそれぞれに区画を決めて、調査に行こうとしていた。
「蝶野は手伝う気は無いのか?」
カズキは特に何をするでもなくお茶請けとしてだされていた団子を食べているパピヨンに尋ねる。
「そこまでしてやる義理は無い。昨日は俺の身の危険とそれまでに住まわせてもらった恩からここまで連れてきてやったがな」
「その男がこっちの良い様に動くはずが無いでしょう」
それを聞いてイリヤがカズキに話しかける。
「それもそうか」
カズキはその言葉に納得する。
「そう言えばだが……あの鎌女はどうしたんだ?」
パピヨンは団子を飲み込み、丁度、近くに居たなのはに尋ねる。
「鎌女って、フェイトちゃんの事ですか?」
「それ以外に居ないだろう。鎌を使う奴など」
パピヨンの言葉に斗貴子が鋭い視線を送ってくるが気にも留めていない。
というか、知っていて言っているようだ。
「フェイトちゃんはまだ、アースラに居ます。
時空管理局への引渡しや裁判の準備が出来ていないらしくて……」
「なるほどな」
「心配だったんですか?」
「別に。まぁ、流石に腐れ縁だったからな。どうなったのか気にはなった。
だが、この調子ならもう二度と会うことも無いだろうな」
「そんな……」
「そもそも、奴は別世界の人間なんだろう。出会ってしまったことがおかしいんだ」
パピヨンの言葉になのはは俯く。
「蝶野!」
カズキが怒鳴る。
「待ってください」
それをなのはが止める。
そして、パピヨンの顔を真っ直ぐに見る。
「私はフェイトちゃんと出会えたこと、凄く嬉しかったです。
もし、出会うことが本当はおかしいんだったとしても、私はこの出会いを大切にしたい」
「すればいい。それはお前の勝手だ」
パピヨンは口元を吊り上げ、笑うと立ち上がり、そのままその場を去っていく。
「パピヨンさんって優しい人ですね」
なのはのその言葉にカズキと斗貴子は噴出す。
「えぇ……流石にそれは無いと思うけど……」
「でも、それって多分、カズキさんと出会ったからだと思います」
「俺と?」
「はい。もし、病気にならなくてもあの人は人を心配するような人にはならなかったと思う。
ホムンクルスにはなっちゃったけど、カズキさんと出会って変わったんですよ」
「そうかな?」
「そうだと思います。誰であれ、人と出会って、それで変わっていける……
相川始さんも多分、剣崎さんと出会って変わったと思うんです」
「……そうだな。なのはの言うとおりだと思う。
ホムンクルスだとかアンデッドだとか……そう言うものじゃ無いよな」
「はい、だから、助けましょう。あの人を……だって、嫌だったんだよね?ジョーカーになるの?」
なのははイリヤに尋ねる。
「えぇ、始はジョーカーの姿を忌み嫌っていた。だから、いつもはヒューマンアンデッドの姿だった。
それで安心してるみたいだったわ」
「大丈夫だよ。イリヤちゃん。私が……ううん、私たちが助けてみせる」
なのははイリヤの手を掴んで約束する。

「人と出会って変わる……か」
士郎はその言葉を聞いて呟く。
「どうしたんだ?」
それに気づいてシンが尋ねる。
その近くに二人のほかに人は居ない。
セイバーは今、鎧を着るために傍を離れていた。
「いや、セイバーも変えられるのかなって思ってさ」
「あいつをか?無理なんじゃないか?」
シンはその言葉に否定的だった。
「いや、あいてが英霊だからって元は人だったんだ。頑張れば変わるはずだよ。
だから、シン、頑張ろう!」
「何で俺が……それに聖杯戦争が終わったらあいつも帰るんだろ。
頑張ったってしょうがなくないか?」
「そんな事無い!そりゃ、俺たちとは分かれるかも知れないけど。
それでも次にセイバーが呼び出された時に変わってるはずだ」
「まぁ、聖杯を使ってセイバーの願いを適えるのはアレだし……
でも、今からか、時間が無いだろ」
「そうなんだよな……」
士郎はため息を吐く。


それから、剣崎たちは始の捜索を行った。
街の中を隅々まで探し、聞き込みを行った。
だが、一向に手がかりはつかめない。


時間だけが過ぎ、太陽は落ちて、夜へと変わる。
何の手がかりも無い焦りだけが募っていた。
だが、転機は突如として訪れた。
それは世界を轟かすような魔力の波動。
街を飲み込み、その余波で人々は恐怖に怯える。
ある者は錯乱し、ある者は泣きじゃくり、ある者は失神した。
「剣崎さん!」
それを受けてシンが叫ぶ。
「あぁ……アンデッドサーチャーにも反応がある」
剣崎はアンデッドサーチャーを確認する。
その座標は見覚えのある場所だった。
「博麗神社……」
幻想郷と現実世界との唯一の接点。
そこからその魔力の波は奔った。
目標は博麗神社に居る。
直ぐに全員にその旨が告げられた。


博麗神社へと続く山道。
既に荒れ果ててしまった石段の始まりに剣崎とシンは到着する。
そこで彼らを待ち受けていたのは三体のアンデッドとそれを従える女性の姿だった。
「アンデッド……!?カテゴリーKの手下か!?」
それを見て二人は警戒する。
「仮面ライダー……ジョーカーを追って来てみれば」
女性は剣崎を見て呟く。
「ジョーカーを追って……お前はカテゴリーKの仲間じゃないのか?」
「違う……だが、仮面ライダーが居るとなればその排除の方が先か」
女性はそういうとアンデッドの姿をとる。
「結局、戦うつもりかよ!」
シンは転送機を構える。
剣崎もバックルを腰に装着した。
「コール・インパルス!」
「変身!」
二人は戦闘形態を取ると三体のアンデッドを相手に戦闘を開始した。
サーペントアンデッド、ペッカーアンデッド、トータスアンデッド、バッファローアンデッド。
数の上で完全に負けているがここで引くつもりは無い。
「今はお前たちの相手をしてる暇は無いんだよ!」
シンはフォースシルエットを装着して、ビームサーベルでサーペントアンデッドに斬りかかる。
サーペントアンデッドの皮膚を焼くが致命傷には程遠い。
それを知ってか、全く気にも止めずにサーペントアンデッドは腕の蛇のような触手を伸ばしてインパルスを攻撃する。
シンはそれを回避し、距離をとる。
「やっぱり、フォースシルエットじゃ……」
しかし、シルエットの変更を躊躇う。
転送装置の限界により短時間での連続変更は不可能なのだ。
今、ソードやブラストといった強力な火器を持つ、シルエットを使ってしまえばこの先に居るはずのカテゴリーKとギルガメッシュを相手取るのは難しくなる。

剣崎はトータスアンデッドの鉄球を回避し、懐に飛び込もうとする。
だが、突如として何かに引っ張られ、その体が浮かび上がった。
「うわっ!?」
それに驚くがどうにか体勢を整えて着地する。
だが、その眼前にはバッファローアンデッドの姿があった。
バッファローアンデッドはその巨大な角でブレイドに襲い掛かる。
「くっ!」
ブレイドはその角を両手で受け止めるがそのパワーに体は浮かび上がり、押される。
そして、そのまま、無数の木をなぎ倒しながらバッファローアンデッドは突進する。
数十本の木が倒れて、どうにかバッファローアンデッドの突進は止まった。
「このっ!」
ブレイドはバッファローアンデッドの顔面を蹴り上げ、距離を空ける。

シンと剣崎はどうにか距離を空けて合流する。
完全に多勢に無勢。更にその全てがアンデッドである為に戦いは絶望的ですらあった。
「流石に二人でこの数はまずいですよ。それにあのアンデッドは上級アンデッドみたいですし」
「仕方ない。ジャックフォームになって一気に……」
剣崎はアブゾーバーを使おうとする。
「まて、その力はカテゴリーKを相手にとっておけ」
だが、それを制止する声がある。
「橘さん!」
そこには仮面ライダーギャレンの姿があった。
それだけじゃない。
「全く、二人そろって先走るからこういう目にあうんだ」
アスランの姿もある。
増援の登場に二人は歓喜する。
「ここは俺たちに任せてお前たちは先を目指せ!」
そして、橘は二人に並び立つとそう告げた。
「何を言ってるんですか!?ここは全員で一気にかかったほうが」
「それでどれだけ時間を浪費するか分からん。
ここは一刻も早く、相川始の救出を優先したほうが良い」
「そうだな。既に遅いかもしれんがより厄介な事態になる可能性もある」
アスランもそれを肯定する。
「でも、だったら俺よりもアスランさんが先に行った方が……」
「先に行くのが剣崎さんならお前のほうが適任だよ。
それに俺はお前の力を信頼しているしな」
「アスランさん……」
シンは驚き呆ける。
「さっさと行け!勝算はある」
「はい!」
剣崎とシンは飛び出す。
それを妨害しようとアンデッドたちは立ちふさがるがそれを二つの銃撃が妨害する。
それにより出来た隙を潜り抜けて二人は一気に山道を登って行った。

「さて……そうは行ったが、橘さん。本当に勝算はあるんですか?」
アスランが橘に尋ねる。
「まぁな。一つはいずれ来る味方の援護だ。
そして、もう一つ……先にあの上級アンデッドを叩く」
「先に頭を潰すって事ですか?」
「それもある。だが、あいつはカテゴリーQだ。それもダイヤのな。ならば、俺も使えるようになる」
橘はラウズアブゾーバーを見せる。
「ジャックフォーム……確かにそれなら勝算は上がる」
「あぁ、ザフトのエースの力。当てにさせてもらう!」
二人は狙いを定め、サーペントアンデッドに襲い掛かる。
だが、それを妨害するようにトータスアンデッドが前に立ちふさがった。
「邪魔をするな!」
アスランはスーパーフォルティスビーム砲を放つ。
だが、トータスアンデッドはその甲殻でそのビームを防御した。
「今だ!」
橘はその隙に腋を通り抜けようとするがそれをペッカーアンデッドが妨害する。
鋭利なナイフがギャレンの装甲を切り裂く。
「はぁッ!」
しかし、橘は怯まずにペッカーアンデッドを蹴り飛ばし、ギャレンラウザーを放つ。
その攻撃で怯んだ隙に駆け出そうとしたがその動きが止まる。
「何!?」
ギャレンはバッファローアンデッドの磁力に捕まってしまった。
必死にもがくが身動きが取れない。
「残念だったな。そう、簡単に将を射れる筈がないでしょう」
サーペントアンデッドは蛇の口でギャレンを切り裂く。
「ぐあああ!」
その衝撃に橘は叫ぶ。
「やめろぉ!」
アスランは状態を察知するとバッファローアンデッドに対してビームライフルを撃つ。
だが、ビームはバッファローアンデッドに到達する前に逸らされ、背後にあった樹木を貫いた。
「強力な磁場がバリアになってるのか……だったら!」
アスランはビームサーベルを抜いて、バッファローアンデッドに接近戦を仕掛ける。
ビームサーベルのビームは逸らされること無くバッファローアンデッドの肉体を傷つけた。
それにより、橘の拘束が解ける。
「今だ!」
橘は即座にサーペントアンデッドに肉薄する。
だが、それをトータスアンデッドが体当たりで妨害する。
その衝撃にギャレンは吹き飛ばされ、樹木をぶち抜いて地面に落ちる。
「橘さん!このぉ!」
アスランは追撃を仕掛けようとするトータスアンデッドに斬りかかる。
しかし、ビームサーベルの一撃は殆どトータスアンデッドにダメージを与えない。
「こいつ!硬すぎる!」
アスランはその防御の硬さに驚愕する。
頑丈なアンデッドの中でも殊更に頑丈だ。
そんなアスランに対してトータスアンデッドは鉄球を振り下ろす。
アスランはそれを回避し、ギャレンの傍に行くと彼を抱えて距離を空けた。

「駄目だ……バッファローアンデッドとトータスアンデッドをどうにかしないと奴に辿り着けん」
橘は現状を見て呟く。
その鉄壁の守りとも言える二つのアンデッドを抜かなければサーペントアンデッドと戦闘することすら出来ない。
「ハーハハハハ!諦めて倒されるんだな。仮面ライダー!」
サーペントの号令と共にペッカーとバッファローが二人に襲い掛かる。
「二人とも離れて!」
そこに背後から声が聞こえる。
二人はその瞬間にその場から離脱した。
そして、それと同時に巨大な閃光が二体のアンデッドを飲み込む。
「この砲撃はなのはか!?」
それに驚きつつもアスランは振り向く。
その予想通りにレイジングハートの砲撃モードを構えるなのはの姿があった。
「すいません。遅れました」
なのはが告げる。
だが、それと同時にその体が引っ張られていく。
バッファローアンデッドはその角を構えて、獲物を引き寄せる。
「そんなに近づいて欲しいなら、こっちから行ってやる!」
しかし、引き寄せるなのはよりも先にその背後から迫った影がバッファローアンデッドに突撃する。
「サンライトスラッシャー!」
カズキは飾り布のエネルギーを放射して、凄まじい速度でバッファローアンデッドにサンライトハートを突き立てる。
それに対してバッファローアンデッドは角で迎撃する。
ぶつかり合う二つの巨角。
その勝者は太陽光の槍だった。
バッファローアンデッドの角は砕ける。
「よし!」
カズキはそれと同時に引き寄せられる力を感じなくなり叫ぶ。
だが、そんなカズキにペッカーアンデッドが襲い掛かる。
「油断するな!」
それを斗貴子のバルキリースカートが防ぐ。
「ありがとう、斗貴子さん」
カズキは感謝しつつ、バッファローアンデッドに向かっていく。
角を折られてもバッファローアンデッドの戦意は高いままだった。

「流石だな」
橘は増援に対して呟く。
既に下級アンデッドが相手なら彼らは十二分、いや、それ以上に戦える。
そこに更に士郎とセイバー、凛とアーチャーが駆けつける。
「剣崎さんとシンは?」
士郎は二人が居ないのに気づいて橘に尋ねる。
「二人は先に行ってもらった」
「そうか……だったら、俺たちもこいつらを倒して追いつこう!」
士郎は身構える。
「いえ、士郎。ここは私たちも一真とシンを追いかけましょう」
しかし、セイバーが提案する。
「それは二人が信頼できないって事か?」
「いえ……だが、相手があのアーチャー……いえ、前回のアーチャーなら一筋縄ではいかない」
「ギルガメッシュか……それほど強敵だったのか?」
「はい、勝利できたのは奇跡的でした。あの二人がどれだけ強くてもあれを相手取るのは難しい」
「すいません。橘さん、俺たちは……」
士郎が橘に進言する。
「あぁ、大丈夫だ。それに俺も心配ではあった。
すまないが二人を頼むぞ。士郎、セイバー」
橘の言葉に二人は頷いて、駆け出していく。
「さて、私たちはどうしようかしらね」
凛は戦力の状況を確認しながら呟く。
「ここで残って戦ったほうが懸命だな」
そんな凛にアーチャーが提案する。
「珍しいわね。ここにはサーヴァントは居ない。無駄な戦いになるわよ」
「君らしくないな……サーヴァントならそこに居るだろう」
アーチャーはそう言って弓矢を生成すると暗闇に向かって射る。
それと同時に暗闇から何者かが飛び出してきた。

「ちっ、気づいてたか」
地面にランサーが着地する。
「ランサー……この戦いの漁夫の利を狙ってたってとこかしら」
凛はその姿を見て呟く。
「だろうな」
アーチャーは弓を捨てて、その両手に短剣を生成する。
「やれやれ……まぁ、今回はガチで行って良いって許しが出ているんでね。
お前に勝ち目は無いぜ、アーチャー!」
「さっさとかかって来たらどうだ?」
「遠慮なく行かせてもらうぜ!」
ランサーとアーチャー、二人のサーヴァントがぶつかり合う。

「サーヴァントも出たのか……」
それを見ながらカズキはバッファローアンデッドの攻撃を回避する。
「どうやら、聖杯戦争は今夜で終わるみたいだな」
その呟きに斗貴子が反応する。
残ったサーヴァントは全てこの場に存在している。
否応なしにも最後の戦いといったところだろう。
時期としても儀式の限界は近かった。
「あっちは任せて……こっちは!」
カズキはバッファローアンデッドを突き刺す。
だが、バッファローアンデッドはサンライトハートを掴んだ。
「しまった!」
カズキは急いで引き抜こうとするがびくともしない。
そして、そのまま、バッファローアンデッドは駆け出す。

「ちっ!」
アーチャーはそれに気づくとランサーから距離をとり、即座に弓矢を形成する。
「偽・螺旋剣【カラドボルグ】」
そして、螺旋状の剣を生成して、その弦にセットした。
狙うはカズキを拘束して走るバッファローアンデッド。
アーチャーは即座に狙いを定めると弓を放つ。
「ブロークン・ファンタズム」
螺旋剣はバッファローアンデッドに突き刺さると爆発する。
その衝撃にカズキは解放された。
だが、アーチャーはその隙を突かれ、わき腹に槍が突き刺さる。
「真剣勝負の間に味方を助けに入るなんてな……舐めてるのか?」
ランサーは槍を引き抜く。
「アーチャー!」
凛はランサーに向かって宝石を投げつける。
それは爆発し、ランサーの追撃を妨害した。

「大丈夫か!?」
そこにカズキが駆けつける。
「何、大した事は無い……」
「何で俺を助けたんだ。その傷じゃ……」
「あのままじゃ、君が死んでしまうと思ったらな。体が動いていた……」
アーチャーは震えながらカズキに対して手を差し出す。
「アーチャー……」
カズキはその手を握る。
「やはり、君は優しいな……案ずるな。まだ、戦えるさ」
アーチャーはよろけるように立ち上がる。
「無茶よ!」
しかし、凛はそれを制止しようとする。
「だが、戦えるのは俺だけだ」
「いや、俺が戦う」
カズキはランスを構えてランサーに対峙する。
「それこそ無茶よ!相手はサーヴァントなのよ。
幾ら、武装錬金を持っているからって人間がサーヴァントに勝てるはずが無いわ!」
凛はカズキを止めようとする。
だが、カズキは決意は固かった。
「俺のせいでアーチャーは傷ついたんだ。だったら、俺が償わないと」
カズキは譲らずにランサーに向かって突撃する。
しかし、そのチャージをランサーは軽々と回避してみせる。
「止めとけ、お前じゃ相手にならねぇよ」
ランサーはカズキを無視して行こうとする。
だが、その背中に衝撃を受けて立ち止まる。
「逃げるのか、ランサー?」
カズキは飾り布を掴み、ランサーに尋ねる。
「直ぐに後悔させてやるよ。人間が英霊に挑んだことをな!」
ランサーはカズキを敵として認識するとその槍を突き出す。
カズキはそれをサンライトハートで受け止める。
「少しはやるが……それじゃ、遅すぎるぜ!」
ランサーは突きのスピードを速める。
槍はいくつにも分裂したかのようにカズキに襲い掛かる。
カズキはそれを迎撃しようとするも幾つかを体に受けてしまう。
血しぶきが舞い、カズキの体を朱に染める。
「致命傷は避けたか……だが、遅ぇ!それだったら無駄に痛みがますだけだ!」
ランサーは追い討ちを仕掛ける。
「だったら!」
カズキはそれに合わせるように飾り布のエネルギーを爆発させる。
ノーアクションからの急加速、それはランサーの槍を弾き、その体に肉薄する。
だが、ランサーはそれを寸前で回避し、後ろに回りこむ。
カズキも直ぐに振り向き、ランスを構えた。
「なるほど……魔力を爆発させて加速するとは単純だが、いい手だな。
だがな、それだけじゃ俺に触れることは出来ない」
「なら!」
カズキは飾り布を掴む。
「サンライトフラッシャー!」
そして、エネルギーを閃光として一気に解放する。
太陽の光が膨れ上がり、夜間を一気に、昼間のごとく照らし出す。
その光に紛れてカズキはランサーに襲い掛かる。

だが、光が止んだ時に地に伏していたのはカズキだった。
「視覚を封じた程度で勝ったつもりか?」
ランサーは槍に付いた血を振り払い、カズキを跨いで歩き出す。
「さて、トドメと行こうか」
ランサーは未だに膝を突く、アーチャーに槍を向ける。
「トドメ……か。なら、俺にではなく、先に刺すべき者がいるんじゃないか?」
「さっきの小僧か。トドメを刺すも何も刺した後だ。心臓を貫いた。助かるはずが……」
その時、突如としてランサーは脱力感を感じる。
そして、気づく。
それは強制的に魔力を奪われているのだと。
魔力により体を構成している故に影響は顕著に現れた。
「俺から直接、魔力を奪うだと……誰が!?」
ランサーは驚いて振り向くとそこにはゆっくりと立ち上がるカズキの姿があった。
「武藤カズキの心臓を貫いて勝っただと……
その程度で倒せるものか。錬金の魔人を倒したければその核鉄を粉々に砕くしかない。
出来ればの問題だがな」
アーチャーは苦悶の表情を浮かべつつも勝ち誇る。

「この力は皆にも影響が出るから使いたくは無かった……
だけど、そうも言っていられない。
ランサー!全力で行かせて貰う!」
蛍火のように輝く髪、赤銅色の肌。
錬金の魔人ヴィクターと同種の存在と化したカズキはランサーを睨み付ける。
「人間じゃなかったのか」
ランサーはその姿を見て身構える。
カズキはそんなランサーに向かって一気に地面を蹴って加速する。
「だったら、俺も全力で相手してやるよ……刺し穿つ死棘の槍【ゲイ・ボルグ】」
ランサーは宝具の真名を解放し、カズキを絶命へと追いやろうとする。
ランサーのゲイ・ボルグは発動し、カズキの心臓を刺し貫いた。
だが、それでもカズキは止まらない。
そのまま、サンライトハートでランサーの体を貫く。
「ぐっ!」
だが、貫かれるよりも先にランサーは背後に飛び、その突撃を最小限に抑える。
しかし、その腹部からはおびただしいほどの血が流れていた。
「次は貫く!」
カズキはサンライトハートをランサーに向かって構える。
貫かれた心臓は見る見る内に再生していく。

自らの肉体を魔力を持って高速再生し、その魔力は周囲の生物から直接食らう。
傷を付けても、そのダメージを与えた相手から奪って回復する。
非常に性質が悪い存在だった。
ランサーはそれを目の当たりにしてめまいさえ覚える。
だが、逃げ出す気は無かった。

「だったら、全力で粉々に砕く。再生できないぐらいにな!」
ランサーはゲイ・ボルグを構える。
そして、大きく振りかぶった。
「突き穿つ死翔の槍【ゲイ・ボルグ】」
その魔力を全て乗せて、カズキに向かって投擲する。
カズキはそれに向かい、飾り布を巻いたサンライトハートの穂先を向ける。
「サンライトクラッシャー!」
周囲から吸収したエネルギーを全て解放して、それを迎え撃つ。
ぶつかり合う二つの魔力の槍。
放たれたゲイ・ボルグは勢いを失うことなく、カズキのサンライトハートを打ち破ろうと突き進む。
だが、それをさせぬとカズキもサンライトハートに力を込める。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
カズキは全ての力を集中させる。
サンライトハートの輝きは更に高まり、周囲を全て照らし出していく。
暖かな太陽の光。
それは灼熱の力となって、向かい来る死の一撃を弾き飛ばす。
放り上げられるゲイ・ボルグ。
その障害を退けて、カズキの体は一気に加速し、ランサーの体を貫いた。

「まさか……サーヴァントでもない相手に敗北することになるとはな」
静かな様子でランサーは呟く。
「はぁはぁ……黒い核鉄の力を使わなければ負けていた。
いや、俺が既に心臓を失っていなかったら。勝つことは出来なかった」
カズキはヴィクター化を解除する。
「心臓が急所じゃない人間とはな。同じ槍使いにこんな天敵が居たとはな。
だが、良い戦いだったぜ」
ランサーはそう呟くとその体は魔力へと還元されて霧散する。
それを見てカズキはその場に膝を付いた。


カズキがランサーと戦っている最中、なのははトータスアンデッドと戦いを繰り広げていた。
空中からの砲撃。
だが、その一撃はトータスアンデッドを倒すには程遠い。
「ディバインバスターじゃあの甲羅を破れない」
なのはは相手の頑丈さを認識する。
そのなのはに向かってトータスアンデッドは鉄球を振るった。
なのははそれをプロテクションで防御するが衝撃に弾き飛ばされる。
「くっ……」
地面に落ちるなのは。
それに向かってトータスアンデッドが襲い掛かる。
「プロテクション!」
なのはは防御すべく、魔法により障壁を張り、トータスアンデッドの攻撃を受け止める。
激突するアンデッドの拳。
だが、それはバリアを強引に破り、なのはに肉薄する。
「ラウンドシールド!」
それを見越すようになのはは魔力による盾を作り出し、その拳を受け止める。
そして、その衝撃を受けて後方に向かって飛び、攻撃のクリーンヒットを回避する。
「何とか動きを止めないと……」
なのはは即座に魔力の弾丸を作り出し、トータスアンデッドに放つ。
トータスアンデッドはそれを受けても怯みもせず、なのはに向かって突撃する。
「これなら!」
なのはは冷静に次の魔法を唱え、発動させる。
空中に発生した光の輪がトータスアンデッドの体を拘束する。
それを見て、なのはは上空へと飛び上がる。
「星の輝きよ……」
なのはは周囲の魔力を集中させる。
なのはの持つ最大の攻撃魔法スターライトブレイカー。
アンデッドに通用すると思われる魔法はこれだけだ。
だが、その発動には長い時間を要する。
その為の拘束魔法だがトータスアンデッドはそれを強引に打ち破ろうと腕を振るう。
このままでは拘束を解いて、トータスアンデッドが動き出してしまう。
そうなってしまえばスターライトブレイカーを当てるのは非常に困難だ。
だが、その時、周囲の空気が変容する。
それと同時になのはは脱力感を覚えた。
視線を動かせばカズキがヴィクター化するのが見えた。
エネルギードレインによる魔力吸収。
だが、なのははそれを受けても尚、魔力を集中させる。
内在、魔力は引っ張られるがその分は空間に滞在する魔力を吸収すれば良い。
エネルギードレインは生命体からのみその命ともいえる魔力を吸収する。
故に空間に漂う魔力には影響を与えない。
そして、その影響からはアンデッドも逃れることが出来なかった。
トータスアンデッドの動きが鈍る。
なのはの集中も乱されたとは言え、これなら十分に間に合う。
「スターライト……」
周囲の魔力が輝き、なのはの周囲へと集中していく。
空間に存在するマナはカズキがエネルギードレインで吸収し、攻撃の余波として放出している分、先ほどよりも濃くなっていた。
まるで満点の星空のように上空は照らし出され、
その光はなのはへと集中していく。
「ブレイカー!!」
収束した光はレイジングハートの先端に集まり、そこから巨大な光が放出される。
それはまるで光の柱だった。
膨大な桜色の閃光が夜空を貫き、地面へと突き刺さる。
その中心に居たトータスアンデッドはその光に飲み込まれ、その肉体を焼き尽くされる。
光の放出の果てにあったのは砲撃を受けて動かなくなったトータスアンデッドの姿だけだった。

「これで二体目……もう、後が無いな!」
橘はトータスアンデッドの戦闘不能を確認して叫ぶ。
「くっ……己!人間ごときが!」
サーペントアンデッドは無数の蛇を橘に向かって放つ。
橘はそれを全てギャレンラウザーで撃ち落とした。
「ジョーカーを前にして……」
サーペントアンデッドは後ろを振り向き、撤退を開始する。
「逃がすかッ!」
その背中に向かってアスランはアムフォルタスを発射する。
二つの強力なプラズマビームがサーペントアンデッドに直撃し、その体を吹き飛ばす。
「終わりだ」
橘は三つのカードを取り出す。
――――ファイア――――
――――ドロップ――――
――――ジェミニ――――
【バーニングディバイド】
ギャレンは三つのアンデッドの力を覚醒させ、二人へと分身し、サーペントアンデッドに対して炎のキックを叩き込む。
その威力にサーペントアンデッドは爆散する。

「最後の一体か……」
斗貴子はペッカーアンデッドと切り無すみながら呟く。
その体には無数の傷がついていた。
むしろ、アンデッドと接近戦による一体一の戦闘を行い、ここまで軽症で済んでいる彼女の実力の高さがうかがえる。
ペッカーアンデッドはその事態を把握するとつむじ風を生み出し、その場からの逃走を図る。
だが、その体は突如として出現した光の輪が妨害する。
「今です!」
なのはが叫ぶ。
「ありがたい!」
斗貴子はそれを受けてバルキリースカートの四つの刃をペッカーアンデッドに突き刺す。
「臓物をブチ撒けろ!!」
そして、四方に向かって一気に引き裂いた。
緑色の血が放射され、その返り血に斗貴子の体はぬれる。
それにより、ペッカーアンデッドのバックルは開いた。

四体のアンデッドは全員封印される。
「よし……剣崎たちの後を追うぞ」
橘は全員の状態を確認すると告げる。
欠員は居ない。
だが、ダメージが大きいものも存在する。
しかし、ここで引き返す訳にはいかない。
その時、山頂の方角より轟音が轟いた。
それを合図として全員が駆け出す。


時刻は遡り、剣崎とシンへと移る。
彼らは石段を駆け抜けて、神社の境内へと出る。
そこには一人の少年が立っていた。
金髪の軽薄そうな姿。
「お前がカテゴリーKのアンデッドか」
剣崎はその姿を見て叫ぶ。
「そうだよ。ブレイド……だけど、僕の事はキングって呼んで欲しいな」
キングは軽薄な笑みを浮かべて剣崎に話しかける。
「始は何処だ!?」
「ジョーカーのことかい?もしかして、君はジョーカーを助けに来たのか?
ジョーカーが何者なのかもしかしてしらないの?」
「始が破滅の存在によって生み出されたアンデッドだって言うのは知っている」
「へぇ、それを知ってて、まさか、彼を助けに来たなんて……」
「俺は始を助けに来た!」
「……それが何を意味するのかは分かっているのか?」
「別にあいつを優勝させたい訳じゃない……だけど、あいつは俺の友達なんだ。
それだけで助けるには十分だ!」
「……だったら、助け出してみなよ」
キングがそう言うと社の扉を破壊し、一体のアンデッドが飛び出す。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そのアンデッドは上空を見上げ、慟哭する。
それは壮絶なる憎悪。
この世界に生れ落ちたことに対する痛烈なる悲哀。
その衝動のままに声を発し、それは世界を伝播するかの如く、膨れ上がり、伝わっていく。
「あいつは……まさか!?」
剣崎はそのアンデッドを見て叫ぶ。
「状況的に考えてジョーカーアンデッドで間違いないでしょうね」
シンはビームサーベルを構える。
「既にジョーカーは復活した……どうやって止める?」
キングはあざ笑う様に剣崎を見る。
剣崎はそれに対して身構えた。

ジョーカーとなった始。
だが、剣崎には彼を元に戻す手段が無い。
破滅の呼び声が鳴り始めた。

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