AnotherPlayer
AnotherPlayer TOPへ戻る
一覧へ

転送陣の上
インパルスガンダム
セイバーガンダム
仮面ライダーブレイド
仮面ライダーギャレン
仮面ライダーカリス
五人の戦士が並び立つ。
向かう先はプレシアの居城。
アンデッドの転送から位置を割り出すことに成功した。
目的はプレシアの拿捕
そして、アンデッドの封印。
「既に管理局の突入班が先行しているわ。
貴方達はアンデッドの封印だけを考えてくれれば良いわ」
リンディの声が響く。
その言葉に四人は頷いた。
「これでジュエルシードの争奪戦も終わる……」
また一つ戦いの火種はなくなり平和へと近づく。
「相手は上級アンデッドだ。気を引き締めろ」
橘が剣崎とシンに激を飛ばす。
「言われなくたって分かってますよ。
橘さんこそ変なヘマしないでくださいよ」
シンが答える。
「言うようになったな。だが、それぐらいの気概の方が良いだろう」
橘はその強い意思に素直に感心する。
「よし、行こう!」
剣崎の言葉と共に五人の体がアースラから消えた。










AnotherPlayer
第二十四話「願いの果て」






「ここが……」
内部は中世の城を思わせるようだった。
辺りを見回すシンと剣崎。
だが、それを無視してカリスが走り出す。
「勝手に先行するな!」
その後を剣崎が追いかける。
そして、それに他の三人も続いた。

プレシアの玉座の間
特に何の障害もなくそこまで辿りつくことに成功した。
既に管理局の魔導師たちがプレシアを取り囲んでいる。
プレシアはそれを意に返した様子もなく椅子に座ったままだ。
その横にはカプリコーンアンデッドとオーキッドアンデッドが立っている。
「もう逃げられないぞ!観念するんだ!」
シンがビームライフルをプレシアに向ける。
「シン!俺たちの目的はアンデッドの封印だ。
彼女を捕まえるのは俺たちの仕事じゃない!」
そんなシンをアスランが怒鳴る。
「だけどあいつのせいでどれだけの被害が出たと思ってるんですか!?
ジュエルシードをばら撒いて、それにアンデッドの封印だって奴が解いたんです。
それに何より……実の娘を自分の欲望を適えるための道具として扱うなんて……
そんなの許せる筈ないじゃないですか!」
シンが怒りを露にする。
だが、シンの言葉を聴いてプレシアの表情が険しくなる。
「娘?」
プレシアはそう言うと立ち上がる。
「そうだ。フェイト・テスタロッサ……あんな小さな子供をたった一人で戦わせて。
子供は親が護るものだろ!?」
シンが怒鳴るとプレシアは無造作に手を振るう。
魔力の弾丸がインパルスの装甲に突き刺さり、その体を吹き飛ばす。
「うわああッ!」
壁に激突するインパルス。
「……フェイトは私の娘じゃないわ。あんな役立たず娘の筈が無い」
プレシアは焦燥しきった表情で呟く。
「こんな奴の為にあの子は頑張っていたというのか……」
剣崎は憤りを感じ呟く。
「……!」
カリスはおもむろにオーキッドに向かって突撃する。
オーキッドはその攻撃を飛びのき回避する。
「始!」
それに続いて剣崎も駆け出す。
そして、カプリコーンへと斬りかかった。
「へっ!邪魔な奴だな仮面ライダー……プレシア!こいつらは俺たちが片付ける。
お前は準備をしてくれ」
カプリコーンはブレイラウザーを回避し、拳をブレイドに叩きつける。
「任せるわ」
そういうとプレシアは椅子の後ろに続く通路へと歩いていった。
それを阻止しようと局員が駆け出す。
「やらせるかよ、フォオオオオオオウ!!」
それをカプリコーンが三日月のブーメランと衝撃波で阻止した。
たった一撃で局員たちは吹き飛ばされ気絶する。
「くっ、パワーは伊達じゃないって事か!」
アスランはビームサーベルでカプリコーンに切りかかる。
その一撃はカプリコーンの皮膚を焼く。
「なっ!?」
その一撃が通じたことにカプリコーンは驚く。
「対アンデッドを想定して出力を上げているんだ。通じてもらわなくては困る」
アスランは一気に攻勢を仕掛ける。

「ここは三人に任せて俺はプレシアを追う」
ギャレンがプレシアの向かった先に向かう。
「俺も行きます!」
それにシンも続いて行く。

通路の先
そこには一つの巨大な筒が立っていた。
その中は液体に満たされ。
そして、その中で金髪の少女が眠るように浮かんでいる。
「それは!?」
その姿を見てシンは眼を見開く。
その子供の姿はフェイトに似ていた。
いや、瓜二つだ。
ただ、その眠る子供はフェイトよりも幼い。
「この子が……この子だけが私の娘。アリシアよ」
プレシアはいつくしむ様にガラスごしにわが子を抱く。
先ほどまでの険しい表情は緩んでいる。
「それじゃフェイトは……あの子は何なんだ!?」
シンが叫ぶ。
「クローンか……」
橘が静かに呟く。
「そんなに出来が良い物じゃないわ。
だってあの子は魔力特性も利き腕も何もかも違うまがい物だもの」
プレシアは険しい表情で毒づく。
「失った我が子の代わりか……
そして、それが代わりにならないと知りお前は失われた命の復活を目指した。
その為にBOARDにお前はやってきたんだな」
「そうよ。命の復活……その研究に没頭する私の元に天王路が現れた。
アンデッドの存在は私にとって救いの道に思えたわ。
だけど、アンデッドを研究して死者を生き返らせることは出来なかった!」
叫ぶプレシア。
「失った家族を取り戻す……」
シンはプレシアを見て呟く。
そんなシンと違いギャレンはギャレンラウザーをアリシアのカプセル目掛けて放つ。
だが、弾丸はそこに到達する前に見えない壁に阻まれて弾ける。
「貴様!」
プレシアが叫ぶ。
「プレシア・テスタロッサ!失われた命は戻らない。
人は失った人の思い出を胸に生きていかなければならないんだ!」
「何を分かったような口を!」
プレシアの放つ電撃がギャレンを吹き飛ばす。
その横をすり抜けてシンがソードインパルスでプレシアに斬りかかる。
エクスカリバーはプレシアの目前で魔力の壁に阻まれる。
「分かっていないのはお前だ!プレシア!」
「なっ!?」
「失ったものは戻らない。だから、その思い出を大切にするんだろ!?
お前はその思い出すらも踏みにじっているんだ!」
「黙れッ!」
「それにあのフェイトって子はお前の都合で生み出されたとしても生きてるんだ!
どんな都合で生まれてきたってあの子の命はあの子のものだ!
お前の勝手で扱って良い物じゃない!」
「黙れと言っている!」
強力な電撃がインパルスに放たれる。
その衝撃にインパルスの体は弾かれた。
「私は向かうアルハザードへ……そうすればアリシアは眼を覚ましてくれる。
もう一度、私に笑顔を向けてくれるの……」
プレシアはカプセルに抱きつく。
「そう、それ以外はもう何もいらない」
プレシアの言葉と同時に突如、城が揺れ始める。
それと同時に幾つかの箇所で爆発が起きた。


その様子をアースラのブリッジでなのはとフェイトは映像越しに見ていた。
「フェイトちゃん……」
なのはは心配そうにフェイトに声をかける。
だが、フェイトはその言葉が耳に入っていないようだった。
「アルハザード……そんなものが本当にあるとでも思っているの?」
リンディはプレシアの発言に懐疑的だ。
「かつて、次元世界の頂点を極めた文明アルハザード。
大規模な次元震でその所在はいずこかへと消えたと文献にあるけど……」
ユーノが呟く。
「ジュエルシードの力でその道を開こうとしていると言うの……
そんなの不可能だわ!アルハザードなんて実在しない。
自殺行為も同然よ」
リンディの言葉を聴いてなのはが映像に視線を向ける。
「リンディさん。私もいきます!」
なのははリンディに向き直り告げる。
「でも、貴方はさっきの戦いで……」
「こんなのどうってことありません。
それに皆が頑張ってるのに私だけこんなところに居られません」
「……分かったわ。だけど、あの城は何時、崩壊しても可笑しくは無い。
危険だと判断したら直ぐに撤退命令を出すわよ」
「それで構いません」
なのはそういうとお辞儀をする。
そして、フェイトに向き直る。
「フェイトちゃんのお母さんは私が助けてくるから。
フェイトちゃんはここで待っていて」
そう告げるとなのはは走り出した。

「助けるか……捨てられた子供の親を助けてどうすると言うんだか」
その様子を見ていたパピヨンが呟く。
「仲直りをさせたいとそう思っているんだろう。確かに簡単にはいかない。
だけど、笑って良いことじゃない」
クロノがその言葉に反応する。
「笑っては居ないさ。呆れているのさ。
やはり、あいつは偽善者だ。
本人が良しとしている行動を間違いだと断定し、自分の考えを押し付ける」
「お前は!」
クロノが飛び出そうとするのをユーノが後ろから羽交い絞めにして止める。
「離せ!」
「少し待って」
ユーノは必死にクロノを引き止める。
それを無視してパピヨンはフェイトの元へと歩いて行く。
「お前も災難だったな。親に良い様に使われ、いらなくなれば捨てられる。
お前は虫籠の中の蝶だ。
大空を知らず、羽撃たくことも出来ない惨めな蝶だ」
打ちひしがれるフェイトに辛らつな言葉を浴びせる。
「お前がそれで良いと思うならそのままで良いだろう。
だが、嫌なら抗え。籠を壊して羽撃たいて見せろ。
お前にはそれが出来る力があるだろう」
パピヨンはフェイトの目の前に金色の物体を放り投げる。
それはバルディッシュの待機形態。
フェイトの持つ力。
それにフェイトは視線を移す。
「過去は羽を縛る鎖でしかない。お前が羽撃たくにはそれを破壊する必要がある。
そのまま地べたで這いずって、死んで行くというならそれでも良いがな」
パピヨンの言葉を聴いてフェイトは黙っていた口を開く。
「貴方はホムンクルスという化け物になって親を殺した……
どうして、貴方はそんな事が出来たの?」
視線を向けずにパピヨンに尋ねる。
「人を超えた存在に不要なものだからだ」
「貴方の親は貴方に笑いかけたことは無かったの?」
「……忘れたな」
「私はあるよ。母さんは私に笑顔をくれた。優しくしてくれた……
もう一度、その笑顔が見たかったから……
私は母さんの思いに答えようとした」
「だが、現実としてお前は捨てられた。もう二度とお前に笑顔を向けることは無い」
「そうかもしれない……だけど、私の思い出にあるあの顔は消えない」
「二度と向けられない笑顔に何の意味がある?」
「……そうじゃないんだ。多分。
向けられるとかそうじゃない。ただ、そこにあるだけで重要なんだ」
「なら、どうする?」
「止める……母さんのやろうとしていることを……」
「好きにしろ。だが、お前が羽撃たくには過去に決別しなければならない。
縛られたままじゃ羽撃たくことは出来ない」
パピヨンの言葉を聴いてフェイトはバルディッシュを握り締め立ち上がる。
「うん、私は羽撃たくよ。初めて母さんに反抗する。母さんの願いを止める。
それが私が羽撃たくということだから」
フェイトはバルディッシュを起動させ、その身にバリアジャケットを纏う。
そして、パピヨンの横を通って歩いて行く。
「ありがとう」
通り過ぎる間際にそういい残し彼女は歩いていった。

「お前はこうなることが分かってたのか?」
クロノがユーノに尋ねる。
「確証は無かったけど……パピヨンはフェイトと接点が多かったから。
彼ならあの子に大切な言葉が贈れると思ったんだ」
「物騒な言葉にしか聞こえなかったけど……あいつなりの激励なのか」
「本当に言葉通りの意味だったかも知れないけど。
重要なのはそれを受けた人間がどう答えるかじゃないかな。
フェイトって子はあの言葉から母親を救いたいって思えた。
その道はなのはの道と重なる。だから、それで良いんだよ」


「何故、お前らはプレシアに協力した!?何が目的なんだ!?」
ブレイドがカプリコーンを圧倒する。
「くっ!貴様らにゃ関係ないことだ!」
カプリコーンはブーメランを投げつける。
だが、ブレイドはそれをブレイラウザーで叩き落す。
「言いたくないなら仕方ない。だが、お前は封印する!」
ブレイドはブレイラウザーをカプリコーン目掛けて投げつける。
ブレイドの剛腕で放たれたブレイラウザーは深々とカプリコーンの胸に突き刺さる。
「ぐあ……」
その一撃にカプリコーンは後ずさる。
その隙にブレイドはカプリコーンに接近するとそのままブレイラウザーを握り、一気に下に下ろした。
カプリコーンの肉体が胸から腹にかけてきれる。
緑色の鮮血がほとばしった。
「トドメだ!」
そして、そのままブレイラウザーから三つのカードを引き抜く。
―――キック―――
―――サンダー―――
―――マッハ―――
【ライトニングソニック】
「ウェーーーーイ!!」
ブレイドは超音速で駆けるとそのまま跳躍し、電撃を帯びた蹴撃をカプリコーンアンデッドに叩き込む。
その一撃にカプリコーンは吹き飛び、壁に巨大な亀裂をつくり、爆発を起こした。
そして、ブレイドはその体にプライムベスタを投げつけ封印する。

「あっちは終わったようだな。こちらもけりを付けさせてもらう!」
カリスも一気に攻勢に出る。
二対一でなければ負ける要素などは無い。
そうとでも言うかのように一気に叩きつける。
―――ドリル―――
―――トルネード―――
―――フロート―――
カリスの体が風を受け上空遥か高くに舞い上がる。
そして、そのまま回転と落下の力を借りて一気にオーキッドアンデッドの体を貫いた。
その一撃にオーキッドは倒れる。

「流石は最強のアンデッドね……」
倒れるオーキッドが呟く。
「カリスが相手では分が悪すぎたわ。
貴方に負けるのは我慢なら無いけど仕方ないわね」
「………」
カリスはそのままプライムベスタを落とし封印しようとする。
だが、その手をブレイドが止める。
「ちょっと待ってくれ。何でお前はプレシアと協力しようとしたんだ?」
剣崎が尋ねる。
「カプリコーンは話さなかったのに私が話すと思っているの?」
「あいつとお前じゃ感じが違うから。
それにお前が主犯なんじゃないのか?」
「その通りよ……私があいつを誘った。
そう、この狂ったバトルファイトの勝者となるために……」
「狂ったバトルファイト……?」
「貴方達には何の関係も無い事よ。
これ以上、話すつもりも無いわ。
私は封印の座からこの世界の終わりを見物させてもらうわ。
精々……最後の日までいい夢に浸かっているのね。人間」
オーキッドがそこまで告げるとカリスはプライムベスタを落とす。
そして、オーキッドアンデッドの封印が完了した。
「あいつは何を言っていたんだ……?」
剣崎がカリスに尋ねる。
「さぁな。お前は追わなくて良いのか?」
「なのはちゃんと……プレシア・テスタロッサの娘。フェイトちゃんか……」
剣崎と始が戦っているうちに最初になのはが次にフェイトがこの部屋を通り過ぎていった。
「あの子は親に捨てられたはずだ。なのに、何故、ここに着た?」
始が剣崎に尋ねる。
「どんなに辛い思いをしたって親は親だから……
人はどんなに口で恨み言を吐いていたって本当に肉親を切り捨てることなんて出来ない生き物なんだ」
「……どんなに恨んで、殺したいと願っていてもか?」
「殺したい程、憎いってことはそれだけ心を占めてるってことだから。
愛することも憎むこともそれはかわらない。
それが何かの拍子で切り替わってしまうこともあるけれど。
本当はみんな、誰かを愛して居たいんだ」
「それが人間か……」
始はそう呟くとフェイトの向かった先へと歩き出す。
「お前も気になるのか?」
その後を剣崎が続く。
「本当に人がお前の言うような存在なのかを……確かめさせてもらう」


「うおおおお!!」
シンはインパルスのブラストシルエットのミサイルを一気にばら撒く。
大量のミサイルが大広間を占有する多くの魔導兵士を焼き払う。
「なんて数だよ!」
シンは爆煙の中から迫りくる大量の魔導兵士を見て吐き捨てるように叫ぶ。
魔力を受けて自動で動く人形兵士。
戦闘力は高くないがその数のおかげで先に進むことがままならない。
「セイバーもインパルスもここまで大量の敵を倒せる装備は無い……
くそ、ミーティアがあれば……」
アスランは前大戦の際に使用した多数を相手にすることが出来るオプション装備を思い出す。
だが、今はそんなものは存在しない。
手持ちの火器で対応するしかない。
「アスランさん!前から来ます!」
シンがアスランに叫ぶ。
「分かっている!」
アスランは空中で姿勢を変えると腰のフォルティスハイパービーム砲を発射する。
二条のビームが魔導兵士を包み込み融解させる。
「このままじゃ倒すころにはエネルギー切れだ」
アスランはエネルギー残量を気にする。
末に半分以上のエネルギーを費やしている。
このまま戦闘を続行することすらも危険だ。
「俺のほうはフォースシルエットの換装すれば戦えますけど……」
インパルスはシルエットごとにバッテリーの補充が出来る。
だが、フォースシルエットはこの戦況ではそれほど役に立つ装備ではない。
ブラストでなければこの数に押し切られることだろう。
「仕方ない。なら、ここは俺が一人で突破する」
ギャレンが先行し、鎧の群れへと突っ込んで行く。
「そんな、危険すぎる!」
アスランがその判断に静止をかける。
だが、ギャレンは聞かずに突っ込んでいく。
迫りくる鎧兵士はギャレンよりも大きい。
だが、それを物ともせずにギャレンは吹き飛ばし進んでいく。
「流石は仮面ライダー……こうなったら援護するしか無いですよ!」
「……そうだな。ギャレンを援護し道を切り開く!」
シンとアスランはそれぞれのビーム砲を構え、ギャレンの行く末を防ぐ鎧兵士に向ける。
「ふっとべぇっ!!」
二機の放つ、合計四条の光線が鎧を吹き飛ばす。
着弾の衝撃波を受けながらもギャレンはひるまずに突き進む。
だが、そんなギャレンの行く末を防ぐように更に巨大な鎧兵士が壁を突き破り出現する。
「大きい!?」
その大きさは優に10メートルを超えている。
巨大な鎧はギャレン目掛けて拳を振り下ろす。
「ぬ!」
ギャレンはその拳を両手で受け止める。
きしみ、亀裂が入る床。
だが、ギャレンはその巨体からの力を受け止めた。
しかし、跳ね除けることは出来ない。
「力が……やはり、ダメージは大きかったか」
力を込めるが力が入らない。
最初にプレシアから受けた一撃。
それが体の自由を奪う。
身動きの取れないギャレン。
それを救うべくインパルスガンダムとセイバーガンダムがビームライフルを撃つ。
だが、そのビームを意にも返さずに巨大な鎧は力を込める。
「このままじゃ……」
焦るシン。
「ここは私達に任せてください!」
その背後から声が聞こえる。
シンは振り向くと高速で向かってくる二人の少女が見えた。
「なのは!それに、フェイト!?」
シンは予想通りの増援と予想外の増援に驚く。
「フェイトちゃんもプレシアを救う為に着たんです。
信じてもらえないかもしれないけどフェイトちゃんは敵じゃありません」
「……あの女はお前を捨てようとしたんだ。
それなのに助けるって言うのか?」
シンがフェイトに尋ねる。
「確かに母さんは私を捨てたかもしれない……
だけど、私に笑顔を向けてくれた母さんも本当だから。
このまま分かれるなんて嫌なんです」
「分かった。なら、とりあえずあいつを倒さないと先には進めない。
俺とアスランさんの火力じゃ奴を倒しきれない。
二人が頼みだ」
シンはフェイトから巨大な鎧へと向き直る。
「はい!いこう、フェイトちゃん!」
「うん!」
二人の少女が空へと舞い上がる。
「お前なら反対すると思ったが」
アスランがシンに話しかける。
「親が居なくなるのって辛いことですから。そんな悲しみは誰にも味合わせたくないんです」
「……それがお前の戦う意味か」
「そうですよ。悪いですか?」
「いや、お前は口が悪いだけで根っこの部分は他の奴らと変わらないんだなって思ってさ」
「そういうアスランさんは違うんですか?」
「俺はそんなに真っ直ぐにはなれないよ」
アスランは疲れたような表情を見せる。
だが、モビルスーツ越しではシンにはその表情を見ることは出来なかった。

「タイミングを合わせて」
「うん、そっちに合わせる」
なのはとフェイトは魔力を集中させる。
なのはは今までに無いぐらいに気力が充実していた。
ずっと友達になりたかった人とこうして共に何かを成そうとしている。
少しだけでも分かり合えた。
それがなのはに強い心と力をもたらす。
「行くよ!全力全開!!ディバイン……」
「サンダー……」
二人の魔法少女はその魔力を解き放つ。
「バスター!!」
「スマッシャー!!」
桜色と金色の魔力光が一直線に巨大な鎧に向かって伸びる。
二つの魔力は合わさり、その巨体を貫き、完全にその機能を停止させた。

「これなら、何とか間に合いそうだな」
アスランは二人の増援が来たことでそう判断する。
城の崩壊予測時間までそこまで余裕は無い。
脱出を考えればギリギリだ。
だが、未だにゾロゾロと鎧は湧き続ける。
「二人は先に進め!ここは俺たちでどうにかする!」
アスランがなのはとフェイトに向かって叫ぶ。
「お願いします!」
なのははそう返事をするとフェイトと共に城の奥へと向かっていく。
その前に鎧の兵士が立ちふさがる。
「邪魔させるかぁ!!」
だが、それをフォースシルエットに切り替えたインパルスがビームサーベルで一刀の元に切り捨てる。
「絶対に止めろ!とめられなかったら絶対に後悔するから!」
シンがフェイトに向かって叫ぶ。
フェイトはその言葉に頷きなのはと共に先へと進んだ。


「アリシア、もう直ぐよ……もう、直ぐアルハザードへの門が開く」
プレシアはアリシアの入ったカプセルをいつくしむように抱く。
その前にはジュエルシードが次元に穴を開けるべくその力を解放していた。
「母さん!」
そこにフェイトとなのはが突入する。
その声にプレシアはその方向を見る。
「フェイト……何しにきたの?貴方はもう、要らないと言った筈よ」
プレシアはフェイトを拒絶する。
「うん、分かってる……私がアリシアを基にしたクローンで、アリシアになれなかったから捨てられたって……
だけど、それは良いの」
「だったら、もう私に用は無いはずよ。消えなさい、今すぐに」
「それは出来ないよ。だって、母さんは母さんだから。
捨てられたって私にとっての母さんだから。見殺しになんて出来ない」
「見殺し……?違うわ。私はアルハザードに渡るのよ。
かつて、ロストロギアを生み出し、次元世界の全てを支配し、全ての生命を自在に操ったとされる伝説の文明。
それはまだ、この世界に存在している。
そこに辿りつけばアリシアを蘇らせることが出来るのよ!」
叫ぶプレシア。
彼女にフェイトの声は届いていない。
彼女の妄信を振り払うことが出来ない。
だが、刻一刻と城の崩壊は進んでいく。
ジュエルシードの魔力が更に上昇し、次元を歪ませていく。
「このままじゃ私たちまで……」
その強力な圧力になのはは焦りを覚える。
このままここに留まる事も危険だ。

「その方法でアルハザードへ行く事は不可能だ」
そこに始がやってきた。
そして、プレシアのしている事を否定する。
「貴方にどうしてそれが分かるというの?」
プレシアは視線を始に移す。
「あいつらは知らなかったようだがアルハザードは既に存在しない」
「どうして断言できる?幾らアンデッドでも貴方達は一万年前に封印されたのよ」
「……俺は普通のアンデッドとは違う」
「普通のアンデッドと違う……まさか、貴方は!?」
その時、より一層、激しくジュエルシードが輝いた。
それと同時にプレシアの立っていた地面に亀裂が入る。
「!?」
そして、プレシアの体が次元の穴へと落ちようとする。
「母さん!」
それに咄嗟に反応してフェイトが駆け寄る。
間一髪でフェイトはプレシアの手を取ることが出来た。
だが、プレシアの体は断崖の下へと落ちようとしている。
「くっ……」
フェイトは力を込めるも次元の穴はプレシアを取り込もうとする。
それに抗うだけの力はフェイトには無い。
フェイトの体も徐々に次元の穴へと落ちようとして行く。
「フェイトちゃん!」
それを助けようとなのはも力を貸す。
だが、たかが少女二人の力では引き上げることも出来ない。
「……放しなさい。このままでは貴方も次元の闇に落ちることになるわ」
しかし、プレシアはその手を拒絶する。
「いやっ!」
しかし、それをフェイトは拒絶する。
「私はずっと母さんの笑顔が見たかった。それが私に向けられなくても良いの。
私はアリシアの代わりにはなれないけど……
それでも母さんの娘だから」
フェイトはしっかりとプレシアの手を握る。
「……娘」
アリシアはその言葉に眼を丸くする。
フェイトは懸命に力を込めるもその体は徐々に穴へと落ちていこうとする。
なのはも力を合わせるが圧倒的に力が足りない。
「あっ!」
その体が穴へと滑り落ちそうになる。
「危ないッ!!」
フェイトとなのは、その二人の体を誰かが支える。
「シンさん!剣崎さん!」
なのはは二人に対して嬉しそうに叫ぶ。
「全く……あんたはどうして子供の言葉を聴かない!
残された子供がどれだけ辛いのか考えたことがあるのか!?」
「フェイトちゃんはまだ子供じゃないか。親のあんたが面倒をみないでどうする。
プレシア、お前が失った自分の娘を助けたい気持ちは分かる。
だけど、フェイトもお前の娘なんだ。見捨てて行く事は許さない」
シンと剣崎が叫ぶ。
共に親を失い、孤独の中で戦い続けたからこそ親の大切さを知っている。
彼らはプレシアのためというよりも残されるフェイトの為に力を貸す。
しかし、二人の力を以ってしても引き上げるまではいかない。
既になのはとフェイトの二人が囚われてしまっているからだ。
「このままじゃ……」
シンと剣崎は懸命に力を込めるが全く引きあがる様子が無い。
まるで光り輝くジュエルシードがプレシアを引き寄せているようだった。
プレシアはただ、フェイトの顔を見ている。
フェイトはまだ、あきらめていなかった。
懸命にその手を放そうとしない。
だが、プレシアはその手を自ら放した。
「!?」
離れた手
プレシアの体はそのまま次元の闇へと吸い込まれていく。
「母さん!!」
フェイトもその後を追おうとする。
だが、それをシンは強引に崖の上へと引き上げた。
「お前まで後を追ってどうするって言うんだよ!?」
なおも懸命に後を追おうとするフェイトをシンは羽交い絞めにして止める。
「……フェイトちゃん、今はとにかく帰ろう」
なのはがフェイトに言葉をかける。
フェイトは動きを止めると静かに頷くとなのはの言葉に従った。


アースラのブリッジ
「そうか……プレシアを助けることは出来なかったか」
先に帰還していた橘とアスランがシンから報告を受ける。
「プレシアのやったことは許せませんけど……だけど、あいつの気持ちの全て理解できない訳じゃないです。
もし、失ったものが取り戻せるなら……そんな甘い幻想を抱いたことが無いわけじゃありませんから」
シンの言葉にアスランも静かに肯定する。
「結局、フェイトは最後まで認められることはなかった」
「……俺たちにしてやれることなんて無い。もし、それが出来るならずっと彼女を案じていたなのはちゃんだけだと思う」
「……そうですね」
アスランの言葉をシンは少し考えてから肯定する。


ここにジュエルシードを巡る戦いは終結した。
だが、この戦いもこれから起こる大いなる戦いの布石の一つにしか過ぎない。
高町なのはとフェイト・テスタロッサ……
二人の少女の戦いと宿命はまだ、終わらない。



前へ

一覧へ戻る

次へ