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博麗神社
その中にある霊夢が暮らしている場所でシンたちは紫と話しをしている。
戦闘で負った傷は応急的な処置がとられている。
元々、負傷は大きいものではなく今後に支障が出るようなものは無い。
「それで何で勝負なんてしたの?」
代表として霊夢が紫に尋ねる。
シンに任せれば感情が先に来て荒れるだろうし、剣崎は消耗が一番大きいので負担はかけたくない。
そこで幻想郷の人間である霊夢が仲介役と言う形で紫の話を聞くことになった。
「外の人間がどれほどの力を持っているか。それを見定める為です。
このまま外に帰して安全な存在かどうか確認する必要がありました」
「そこが繋がらないわね。もし、こいつらに幻想郷をどうにかする考えがあったとして強さなんて関係ないじゃない」
「あります。力でねじ伏せられる相手なら大した障害にならない。
もし、戦いを仕掛けてきても追い返すことが出来る。そういうこです」
「ふぅん。でも、仲間を呼んでもっと大勢で来るかも知れないわよ?」
「もし、そのような行為に走ろうとすれば先手を討ちます。
彼らと私との戦力差なら一瞬で片が尽きますから」
つまり、他言し幻想郷に危害を加えるならば殺すと紫は脅しているのだ。
それを感じ取りシン達の表情は険しくなる。
面白くない状況だ。
自分達が信じられていないのもその気になれば直ぐに殺せると脅されているのも。
「まぁ、良いわ。とりあえず、あんたはこいつらを安全に戻す。それで良いのよね?」
霊夢が話を切り上げて尋ねる。
紫はその問いに頷いた。
「もちろんです。外の人間が幻想郷に長く滞在することはあまり好ましい事ではありません」
「だそうよ。これでお別れね」
霊夢が振り向きシンたちに告げる。
幻想郷からの帰還。
それは霊夢たちとの別れでもあった。









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第十八話「別れた願い」





博麗神社の境内
既に日も落ち始めている。
治療で少々、時間をとりすぎてしまった。
紫が少し力を込めると空間にスキマが出現する。
「それにしても恐ろしい力ね。空間と空間を繋げてそこを自由自在に行き来する」
その力を完全に使われればどんなに速くても捕らえることは不可能だろう。
実際にまともに決まりそうだった攻撃はその移動で無力化されていた。
「まぁ、もう戦う必要も無いんだし。気にする必要は無いんじゃないか?」
「そうね……」
真紅は紫の顔を見つめる。
何故か、このまま終わるとは思えなかった。
「帰ったらとりあえず、お父さんお母さんに謝らないと」
「あぁ……俺も艦長に報告しないとな……」
溜息を吐くなのはにシンも今回の件を報告しなければならないことを思い出し頭を抱える。
そんなシンの首筋にピタリと紫の扇子が当てられた。
「くれぐれも幻想郷の事は他言しないように」
殺気の込められた言葉。
それにシンは背筋が凍る感覚を味わう。
「分かってるよ!そういう約束だからな!」
シンはそれを振り払うように叫ぶ。
紫との約束で幻想郷について誰にも言わないという事になった。
既に一部の人間には話してしまっているがそれ以上、広めるなという事である。
「私の能力を見れば分かるように私は外の世界にもいける。
出れば安全……などという安易な考え方はしないほうがよろしいですわ」
「そんなに信用できないなら俺たち全員の首を跳ねれば良いだろ!?妖怪が!」
シンはしつこい脅しに怒りを爆発させる。
振り向きざまに紫の手を弾いた。
「紫様に何を!」
それを見ていた藍が飛び出そうとする。
だが、それを紫が静止した。
「止めなさい……シン・アスカ。何も考えず無闇に噛み付き続ければいずれ命を落としますよ」
「はっ、説教かよ。あいにくだがお前の話なんて聞きたくもない」
「おい、シン!」
そんなシンの肩を剣崎が強く掴む。
「何ですか!?」
「確かに気持ちは分かるけど仮にも俺たちを帰してくれる恩人だぞ」
「……そうでしたね」
納得がいかない様子でシンは黙る。
だが、張り詰めた空気だけはその場に残った。

そんな空気を破るように霊夢がシンを蹴り飛ばす。
そのままシンはスキマを越えて外へと放り出された。
「いたっ!何をするんだよ!?」
シンが起き上がり非難の声を上げる。
「全くアンタはいつまでそんな調子なのよ。紫の言葉に肩を持つのも嫌だけど。あんたそのままじゃ死ぬわよ」
「うるさいな!別にお前には関係ないだろ」
「そうね。関係ないわ。これであんたとは二度と会うことは無いだろうし」
霊夢のその言葉でシンは息を呑む。
スキマによって繋げられた外と中。
本来なら続いているはずで続いていない矛盾した世界。
帰ってしまえばもう入ることは出来ない。
そういう約束だ。
紫に幻想郷の他言と今後一切の干渉はしないことを約束した。
それは永遠の別れを意味していた。
「そうだな……」
そのことをようやく意識として感じシンはクールダウンする。
偶発的な事故による出会い。
そして、更に事故が続いて霊夢と魔理沙とは短い間だったが共に戦う事になった。
彼女達の協力が無ければ負けていた戦いもあったかもしれない。
破天荒な二人の少女は間違いなく戦友だった。
「何よいきなり落ち込んで。本当に感情の落差が激しいわね」
「別に落ち込んでなんか……」
「それとも不安になったのかしら?私が居ないと異変を解決できないの?」
「そんな事ない。確かにお前達が居ないとその分、苦労すると思う。
だけど、LXEについては元々はこっちの問題だったんだ。
だから、俺たちだけでやる。やれる!」
シンは誓う。外の世界の博麗神社がある町を護る事を。
「シンの言うとおり。この戦いは俺たちがやらなきゃならないことなんだ。
だから、心配しないで大丈夫」
「あんたもあんただけどね……まぁ、せいぜい頑張んなさいよ」
カズキがスキマを渡る。
「霊夢さん、魔理沙さん。今までありがとうございまいた。
何だかこれからもずっと一緒に戦っていくって勝手に思ってて……
まさか、こんなに早く別れるなんて……」
なのはが涙ぐむ。
「泣く必要なんて無いじゃない。本当だったら会うはずもなかったんだから。
元に戻るだけよ」
「でも、まだ助けてもらった恩も全然、返せてなくて……
それだけじゃない。二人とも大事な友達だと思ってたから」
「そうね。あんたたちと一緒に居たのも悪くは無かったわ。
ほらほら、さっさと行った行った。
あんまり名残惜しそうにしてると帰れなくなるわよ」
「そうそう、なのはは何か勘違いしてるようだが私とは別に永遠の別れでもなんでも……」
魔理沙がなのはの肩を抱きながら外に出て行こうとするのを霊夢がスカートを引っ張って止める。
魔理沙は盛大に地面にこけた。
「何するんだ!?」
魔理沙は立ち上がり霊夢に怒鳴る。
「何するんだじゃないわよ!あんたは幻想郷の人間でしょ?さも当然のように外に出て行こうとするな!」
「良いじゃないか。結局、ジュエルシードは全然、集まってないしレイジングハートだって手に入れてないんだぜ?」
「どうせ、そんな事だろうと思ったわよ……ほら、なのは。邪魔なのが付いて行く前にさっさと出て」
霊夢が魔理沙を拘束してなのはの出発を促す。
なのはは呆気に盗られながらも頷くとスキマを通った。
「まぁ、色々と世話になったよ」
「あら剣崎さん居たの?」
「居たよ!ひどいな霊夢は……それじゃ、今までありがとう」
「剣崎さんは一応、年上なんだからちゃんとシンの手綱握りなさいよ」
「分かってるよ」
剣崎もスキマを通っていく。
「それじゃ、紫。事件が終わったら二つの人形は幻想郷に戻してくれるのね?」
「それぐらいなら問題ないわ。あまり、外に持ち出されるのも困るけれど今回は大目に見ましょう」
「ありがとう。助かるわ」
真紅は上海人形と蓬莱人形を時がくればアリスの下へと返せれるように紫に約束する。
「それじゃ、アリスに会ったら二つの人形は必ず返すと伝えて頂戴」
真紅が霊夢に告げる。
「それぐらいなら構わないわ。まぁ、多分明日にでも宴会で顔を会わすでしょうし。その時にでも伝えておくわ」
「助かるわ。それじゃ」
真紅もスキマを通っていく。
「俺で最後か」
皆が通って言ったのを確認して翔はスキマへと向かって歩き出す。
「そう言えばまだ、あんたも居たわね」
「居たさ……それじゃ、とりあえずさようならだ」
「とりあえずって何よ。最後の別れよ?」
「……最後って気がしないんだよな」
翔は自分の持つ【運命の剣】を見下ろして呟く。
「まさか、また来るつもりなの?あまり、外の事件を持ち込むのは止めてよ」
「出来る限りな……それじゃ」
翔もスキマを通った。
外からの来訪者が全て帰還したのを見届けると紫はスキマを閉じる。
これで外と幻想郷との入り口は完全に無くなった。
「あぁ!」
ようやく、解放された魔理沙がうなだれて地面に手をつく。
もはや、魔理沙ではどうしようもない。
「ひどいじゃないか!」
と、霊夢を非難するが霊夢は気にも留めずに神社へと歩き出す。
「待ちなさい霊夢」
そんな霊夢に紫が声をかける。
霊夢は歩みを止め、顔だけ振り向いた。
「何か用?」
「貴方、私に手も足も出ず倒されて何も感じなかったのかしら?」
紫の挑発めいた言動に霊夢は眉をぴくりと動かし、目つきが険しくなる。
「あれは偶々よ。ちょっと油断しただけ」
霊夢の負け惜しみめいた言葉。
「そう、油断。貴方は油断していたのよ」
だが、紫はそれを肯定した。
その事に霊夢は少し驚く。
「外で彼らと一緒に戦っていた。そして、冥界でも。
貴方は少し彼らを頼っていた」
「そんな訳無いじゃない。
まぁ、少しは役に立つけどそこまで信頼を置いている訳じゃないわ」
「本当に?貴方はもしかしたら彼らなら自分と同等に歩いていけると期待していたんじゃないの?」
「……何が言いたいの?」
「信頼と依存は違うわ。
偶には自らを高める努力をしたほうが良いわよ。
でなければ彼らに笑われるわ」
「もう二度と会わない奴らに笑われたって関係ないわね」
「本当にそうかしら……貴方自身、感じているんじゃない。
また、いずれ共に戦うということを」
霊夢と紫の言葉が止まる。
それを魔理沙が良く分からないという様子で交互に顔を見比べる。
「おいおい、どういうことだ?
また、あいつらと会うことになるってのか?」
「さぁ?どうでしょう……
ですが、霊夢。
博麗の巫女は魔を払う者……
その宿命からは逃れることは出来ない。
それだけは覚悟しておきなさい」
紫は霊夢にそう告げるとスキマへと消える。
式の二人もそれに続いて消えていった。
境内には霊夢と魔理沙だけが取り残される。
「魔を払う……一体、あいつは何が言いたかったんだ?」
魔理沙が霊夢に尋ねるが霊夢は何かを考えるように空を見上げていた。
「おい、霊夢!」
反応が返ってこないことに苛立ち、魔理沙は霊夢の頭を軽く箒で叩く。
「きゃっ!何するのよ!」
ようやく、霊夢が反応し非難の声を返した。
「どうしたんだ?お前が心配事なんてらしくないじゃないか」
「別に心配なんてしてないわ……
ただ、これから面倒なことになると思っただけよ」
「何だ?異変でも起きるのか?」
神妙な霊夢に魔理沙は気楽に答える。
どちらかというと楽しんでるようにも見える。
「異変ならとっくに起きてるわよ……」
霊夢は常に感じる異様な気配に視線を送りながら呟いた。


外の世界
シンたちが幻想郷から出てきたのは外の博麗神社だった。
夕焼けに照らされる町並みは確かに冬木のもの。
ビルが建つ新都や海も見える。
「日数的には大体二日か……」
シンが日付を確認しながら呟く。
伊坂の罠にかかり幻想郷に行ってから既に二日経っている。
結果だけを見れば早く戻ってこれたが事態がどう動いているかは不明だ。
特にキャプテンブラボーと斗貴子、それに寄宿舎の生徒の安否すらも分からない。
「とりあえず、士郎の家に帰ろう」
剣崎の提案に大体の人が頷く。
「私は帰らせてもらうわ」
だが、真紅はそう主張した。
そもそも彼女は衛宮家に厄介になっている訳ではないので必要は無い。
「そうだったな。真紅。君にも色々と助けられたよ」
「別に構わないわ。それに私達はまだ、お互いに助け合う関係のはずよ」
「え?」
「貴方達はあのLXEという組織と戦うのでしょう?
あいつらは私の妹である雛苺を捕まえている。
だとすれば彼女を助ける為に私も戦わなければならないわ」
「それって俺たちに協力してくれるって事か?」
「そのつもりよ。あいつらに勝つには貴方達の力が必要。
そう思っているわ」
「そっか、ありがとう。助かるよ」
剣崎は真紅の提案を喜んで受け入れる。
「それでまず、手始めに私を送っていってもらいたいのだけれど」
真紅がそう告げると翔が挙手する。
「それじゃ、俺が送ってくよ。というか、この中じゃ俺ぐらいしか家知らないだろうし」
翔はそう言うと真紅を抱きかかえる。
「何かあれば連絡するわ。それじゃ」
真紅は別れを告げると翔に連れられて去っていった。
「あ、私も一回、家に帰りたいんですけど」
真紅が去り、次になのはが提案する。
「そうだな。親御さんも心配してるだろうし。早く帰ってあげなきゃ……
今回は魔理沙も居ないし、流石に俺たちが事情を説明しにいくのも色々とややこしい事になりそうだから」
「大丈夫です。流石に本当の事は言えませんけどどうにか説明してみます」
幻想郷については信用されないし、話すことも出来ない。
このような状況ではまともな説明も無理だろう。
どれだけ怒られるかもわからない。
なのはは急いで家へと向かった。
残ったシン、剣崎、カズキの三人は衛宮家に向かう事になる。

だが、彼らが帰ろうとした瞬間、シンと剣崎の携帯がなる。
その音はアンデッドサーチャーに反応があった時のものだ。
二人は急いで携帯を開いて確認する。
「アンデッドの反応が二つ……アンデッド同士で戦っているのか」
ようやく帰ってきたばかりだがそうも言っていられない。
アンデッドを倒すことは彼らの仕事だから。
「よし、急ごう!」
シン、剣崎、カズキはアンデッドサーチャーの反応があった地点を目指す。


街の一角
カリスはシェルアンデッドと交戦していた。
戦いはカリス優勢で続いている。
それを近くでイリアが見守っていた。
そこに剣崎たちが駆けつける。
「あれはカリス!」
剣崎はカリスが戦っているところを目撃し叫ぶ。
「アンデッドの反応が二つだったってことは……やっぱり、あいつはアンデッドなのか」
シンが今も尚、反応する二つのアンデッド反応を見て呟く。
アンデッドサーチャーが指し示す以上、相川始はアンデッドであるとして間違いないだろう。
アンデッドと戦うのもこれで完全に納得がいった。
「あら?貴方達は戻ってこれたのね」
イリアがそれに気づいて話しかけてくる。
彼女もLXEの関係者の一人、三人が幻想郷に閉じ込めた件も知っているのだろう。
「君は……この前は助かったよ。ありがとう」
カズキはイリアにお礼を言う。
イリアは最初、きょとんとしていたが思い出してニッコリと微笑む。
なのはがホムンクルスに襲われていた際に危機を教えてくれたことがある。
カズキとはそれ以来、出会っていなかったのでそのお礼だった。
「別に、偶々貴方と出会ったから教えただけよ」
「それでも、もしかしたら大事な仲間がいなくなってたかも知れないし」
それに関してはカズキもシンも剣崎も感謝している。
特にカズキはあの件が無ければ救援に駆けつけることも出来なかっただろう。
「それよりも始の邪魔をしちゃダメよ」
バックルを装着する剣崎にイリアが告げる。
「だけど……あいつはアンデッドじゃないか。確かに戦ってるのもアンデッドだけど。
それじゃあいつを勝利者になることに繋がってしまう」
「あら、始がアンデッドならアンデッドと戦うのは当然の事じゃないかしら?
貴方達、仮面ライダーがアンデッドたちの戦いに乱入してる状況じゃない。
戦いはその資格があるもの同士で行うものよ」
イリアの言葉は正しいことでもある。
アンデッドのバトルファイトはそもそもアンデッド同士の戦いだ。
その中で勝者を決めるのがルール。
仮面ライダーは言わばその戦いに横槍しているだけに過ぎない。
そもそも、この戦いに参加する資格が存在しないのだ。
「だったら、アンデッドを野放しにしろっていうのか?
あいつらは人間も襲うんだぞ!」
イリアの言葉に剣崎が叫ぶ。
アンデッドは人間を憎んでいる。
自分達を押しのけ繁栄し、地球の覇者となっている人間達を。
だから、故に彼らは人間を手にかける。
放置しておけばそれだけで犠牲者が増えるのだ。
「そうね。だけど、始は人を手にかけていないわよ」
「え?」
「私が知る限りでは……だけど。
信じようが信じまいが勝手だけれど始はアンデッドとしか戦っていない。
貴方を攻撃したこともあったけれどそれは戒めの為よ。
アンデッドの戦いに介入してくる異物に対して。
そして、命を奪えたけれど奪いはしなかった」
その言葉に剣崎は黙り込む。
そして、戦うカリスの背中を見た。
確かに人を攻撃している姿は見たことが無い。
もし、そうだというのなら積極的にカリスを攻撃することなど出来はしない。
そして、アンデッドを封印しているというのなら考えようによっては人間を助けることに繋がる。
そんな事を考えている間にカリスはシェルアンデッドの封印に成功した。

「……戻って来ていたのか」
人間へと姿を戻した始が忌々しげに剣崎を睨む。
彼にとって剣崎は戦いの邪魔をする敵でしかないのだろう。
「あぁ、アンデッドを野放しにしておくわけにはいかないからな」
先ほどのイリアの話から剣崎は余り始を敵視できなくなっていた。
「何度も言わせるな。アンデッドの戦いに干渉するな」
「……それは出来ない。確かにアンデッド同士からしたら俺たちは邪魔な存在かも知れない。
だけど、これが俺たちの仕事なんだ。
アンデッドが人を襲い続ける限り俺たちは人間を護る為にアンデッドを封印する」
剣崎は一歩も引かない。
それが仕事だから使命だから。
だから、何を言われようと曲げるわけには行かなかった。
激突する二人の視線。
シンもカズキもイリアもそれを黙ってみているしかない。
その折、不意に何かが高速で飛来した。
「!?」
その影はイリアを掴み飛び上がる。
「イリア!」
それに気づいて始が叫んだ。
イリアは一体のアンデッドに掴まれている。
「アンデッド……もう一体、居たのか!」
剣崎が変身しようとAのカードを取り出す。
だが、それを見たアンデッドは掴んだイリアの首に手をかける。
「やめろ!」
始がそれを見て叫ぶ。
その言葉に剣崎は留まった。
それを見てアンデッドの手はイリアの首から離れる。
「人質だっていうのか……」
その卑劣な行為にシンは歯軋り叫ぶ。
アンデッドは何も出来ない面々に満足し、何かを話し始める。
その言葉には人間には理解できなかった。
だが、始はその言葉を聴いて顔をしかめる。
そして、アンデッドはどこかへと飛び去っていってしまった。
「逃げた……あいつはなんて言ったんだ!?」
「一人で来い……アイツは俺との戦いを望んでいる」
始はそう言うと歩き始める。
「ちょっと待てよ。本当に一人で行くつもりなのか?」
そんな始を剣崎が引き止める。
「貴様らには関係ないことだ」
「そんな事ない。俺たちにはイリアちゃんに借りがあるんだ。
それにそんなものが無くたって誰かが危険に晒されてたら手助けするのは当然だろ!?」
跳ね除ける始にカズキが食い下がる。
「それに誘い出してるぐらいなんだ。何が待ってるかなんて分からないぞ?
お前はともかくあの子は人間なんだ。見殺しにするわけにはいかない。
お前が封印されたら、あの子がどうなるかなんて考えなくたって分かるだろ?」
シンの言葉に始は黙り込む。
「……勝手にしろ」
始は素っ気無くそう答えると再び歩き出す。
今度はその後を三人が追って歩き出した。


地下道
そこで先ほどのアンデッド……ドラゴンフライアンデッドが待ち構えていた。
そこに始が一人で姿を現す。
「約束どおり一人で来たか」
その始の姿を確認すると暗がりから伊坂と橘が姿を現す。
「お前の差し金だったか伊坂……イリアはLXEの客人だったはずだ。
それに危害を加えるのか?」
始は伊坂を睨み訪ねる。
この事がもしLXEに露見すれば問題になる。
そう、思い尋ねるが伊坂はその始に対して嘲笑する。
「伝説のアンデッドが随分と人間らしい考え方をしたものだ……
だが、人間はお前が思っているほどに同じ種族に甘い訳ではない。
奴らは承諾したよ。カリス……貴様とこの小娘を同時に始末する。
この作戦にな」
伊坂の言葉にイリアは特に驚かない。
こうなるという予感は以前からしていたし元々、LXEを味方だと思ったことなど無い。
「さらばだカリス……ここが貴様の死に場所だ!」
伊坂の号令と共にドラゴンフライアンデッドと変身したギャレンが始に突撃する。
「変身!」
始は変身し、その二人の攻撃を受け止める。
だが、二対一というこの状況。
そして、イリアを依然として人質に取られている。
始にとって不利な状況でしかない。

「これで邪魔者はほぼ居なくなる」
その戦いを見守り伊坂は自分の思い通りに事が進むことに喜びを感じていた。
既に大半の邪魔者と一緒にブレイドは異世界に送り飛ばした。
橘も完全に支配下にある。
残るアンデッド封印の力を持つ者は始のみだ。
そして、それを倒しさえすればアンデッドを封印できるのは自らが開発したライダーのみ。
この戦いの勝者に最も近づくのは自分だ。
そこに完全な油断が生まれていた。
残りの邪魔者はLXEにより誘導させている。
ここに誰かが邪魔に入るなどと思っては居なかった。
もう少し、慎重になっていれば変わっただろう。
ドラゴンフライアンデッドから話の一つでも聞いていれば事態は変化していたはずだ。
だが、それをしなかった伊坂の傲慢こそが敗北に繋がる。

―――サンダー―――
凄まじいまでのエンジン音と空気を切り裂く稲妻の音が地下道に響き渡る。
それに気づいた時、既に遅かった。
電撃を纏ったブルースペイダーは最高速度で伊坂に襲い掛かる。
時速400キロオーバー。
爆速の一撃が伊坂の体を吹き飛ばした。
「ぐおおおお!!」
瞬間的にアンデッドに姿を戻していた伊坂は低い軌道で遠くへと吹き飛ばされる。
そして、地面に何回かバウンドしながら外へと放り出された。
「流石は正義のヒーロー……ということかしら?」
イリアはブレーキをかけながら伊坂を追うブレイドの後姿を見送る。
「大丈夫か!?」
そこにシンとカズキが駆け寄ってくる。
「おかげ様でね」
カズキに手を引かれてイリアが立ち上がる。

その事態を見守っていたカリスは一気に攻勢に赴く。
剣崎は約束どおりにイリアを助けた。
もはや、気兼ねなどは無い。
カリスラウザーでドラゴンフライアンデッドを切り裂く。
だが、そこにギャレンラウザーの銃撃が襲い掛かった。
その衝撃に体勢を崩す。
「ぐっ……貴様!」
カリスはギャレンに斬りかかるがギャレンはそれを回避し、的確にカウンターを決めた。
キックの一撃がカリスの体を吹き飛ばす。
その戦いにカリスは驚く。
ギャレンの戦いは少しだけ見たことがあるがここまで強いとは予想していなかった。
確かにあのカテゴリーエースを封印した。
だが、人間がここまでの強さを持つなど予想などしていなかった。
「始!」
ブレイドがそこへ駆けつける。
そして、ブレイラウザーをギャレンに対して振り下ろした。
背後からの強襲を受けてギャレンはのけぞる。
「眼を覚ましてください!橘さん!!」
剣崎は言葉と共に攻勢に転じる。
だが、ギャレンはブレイドを敵として認識すると攻撃をさばき的確にブレイドにカウンターを仕掛ける。
戦闘技術では完全に橘が剣崎を上回っている。
そのことを剣崎は改めて痛感する事になった。

伊坂はゆっくりと立ち上がる。
ブルースペイダーの一撃を無防備に食らっていてもさほどダメージは無さそうだ。
それ以上に怒りに震え、拳が強く握られている。
「まさか、位相世界に落としても舞い戻ってくるとはな……どうやら、貴様らを侮っていたようだ」
伊坂……ピーコックアンデッドはその手に剣を持ち、ブレイドへと向かっていく。
「今、この場でトドメをさしてやろう」
ギャレン一人に苦戦するブレイドではピーコックアンデッドの加勢は絶望的だ。
カリスはドラゴンフライアンデッドと交戦中。
シンはインパルスを呼べず、カズキの加勢だけでは太刀打ち出来るとも思えない。
極めて危険な状況。
それを打ち破るように銀の衣が空より舞い降りた。
「そうそう、貴様の思い通りにはさせられんな。伊坂」
キャプテンブラボーは空より降り立つとピーコックアンデッドの前に立ちふさがる。
「戦士長か……厄介な奴に来られたな」
伊坂はブラボーを警戒して歩みを止める。
「ブラボー!助けに来てくれたのか!」
ブレイドはその救援に歓喜の声を上げる。
「元々はアンデッド同士の戦いの被害を出さぬ為に来たのだが。
よもや、お前達に再び出会えるとはな。
積もる話もあるが……今はここを切り抜けることを考えろ」
「あぁ!」
剣崎もその増援に気力を取り戻した。

「ブラボーが来たのか……これで一安心だな」
シンは転送機を持ちつつ呟く。
試してみても結局、インパルスの転送は不可能だった。
インパルス自体が転送可能状態に設定されていないようである。
母艦に連絡して無理に状態を変えるという方法もあるがブラボーも加わったこの状態なら問題ないだろう。
安堵しながら戦いを見守って居ると更に一つの影が上空より飛来した。
シンはそれに反応し空を見上げる。
「敵か!?」
突然の来客
だが、それは敵ではなかった。
いや、それ自体は分からないが少なくとも人知の及ばぬ存在では無さそうだ。
そう、それはシンのインパルスと同じくモビルスーツだったからだ。
「モビルスーツ……まさか!?」
シンは幻想郷に行く前にミネルバから受けた連絡を思い出す。
ザフトからの増援。
それはあの日の翌日に到着するはずだった。
既にあの日より二日経過している。
そう、シンが幻想郷に行っている間に増援は到着していたのだ。
アスラン・ザラ……
二年前の戦争で活躍したエースパイロット。
それは新たな力を経て、この冬木の不可解な戦場に舞い降りる。

「仮面ライダーブレイドだな。こちら、ザフトのアスラン・ザラだ。援護する」
ブレイドの横に降り立ったモビルスーツがブレイドに話しかける。
ブレイドはいきなりの増援に面を食らうが直ぐにシンから聞いていた話しを思い出した。
「シンが言っていた増援か……助かる!」
「大体の事情はブラボーから聞いている。彼が敵に洗脳されているという仮面ライダーか」
「あぁ、橘さんは凄く強いけど大丈夫か?」
「ライダーシステムとの交戦経験は無いがやってみるさ」
アスランは自身のモビルスーツ……セイバーを前方へと進める。
ギャレンはその動きに反応しギャレンラウザーを撃つ。
放たれる弾丸
セイバーはそれを急速に横へとステップし回避した。
そして、一気に加速してギャレンに肉薄する。
瞬時に抜き放たれるビームサーベル。
すれ違い様に一閃
ビームサーベルはギャレンアーマーを若干、損傷させる。
「噂どおりの装甲の硬さだな」
並みのモビルスーツならビームサーベルの直撃を耐えることなど出来はしない。
だが、ライダーシステムに対しては必殺の武器として成り立たなかった。
ビームの温度がアーマーを突破するに至らないのだ。
ギャレンは背後に回ったセイバーに的確に射撃を繰り返す。
アスランはそれをバーニアの軌道で回避し、地上をホバーするように高速で移動する。
かつての戦争を潜り抜けたエースパイロットの実力はギャレンのそれを上回っていた。

「……やっぱり、凄いな」
シンはその戦いを見て呟く。
かつて、一度だけ見たアスランの戦いぶりを思い起こす。
自分の遥か上を行くその実力にシンは憧れを感じていた。
だからこそ戦うことを拒んでいた彼を素直に受け入れることが出来なかった。
だが、これから共に戦ってくれるというなら……
自然とシンの顔が緩む。

カリスは一対一でドラゴンフライアンデッドと戦っていた。
ピーコックアンデッドとギャレンの介入さえ無ければそこまで苦戦することもなくドラゴンフライアンデッドを追い詰めて行く。
「これで終わりだ」
カリスは怯んだドラゴンフライアンデッドに対してトドメの一撃を放つ。
―――ドリル―――
―――トルネード―――
カリスの体を包むように風が取り巻く。
それは竜巻を作り出し、周囲の砂を巻き込んでいった。
カリスの体は風に身を任せ、回転する。
そして、竜巻はドラゴンフライアンデッドへと向かっていく。
――――スピニングアタック――――
ドラゴンフライアンデッドは竜巻に巻き込まれその動きを封じられる。
そこにカリスがドリルキックを叩き込み、その体を貫通した。
強烈な一撃にドラゴンフライアンデッドは戦闘不能になり、バックルが開く。
カリスはプライムベスタを投げつけドラゴンフライアンデッドを封印した。

「ちっ……作戦は失敗か」
ピーコックアンデッドはブラボーとの攻防の最中、封印されるドラゴンフライアンデッドを目撃する。
勝敗は既に決している。
このまま、戦っていても敗北するだけだろう。
伊坂はそう判断し、撤退を開始する。
「逃がすか!」
ブラボーはその後を追おうとするがそれを霧が邪魔をする。
「これは!?」
突然発生した濃霧は完全にブラボーの視界を奪い、追撃を困難にさせた。
既に伊坂の姿は見えず、ギャレンも同時に消え去っている。
「逃げられたようですね」
アスランも敵の撤退を確認し呟く。
「あぁ、仕方ない。とりあえず今は深追いするよりも一旦、戻ろう。剣崎たちも戻ってきたことだしな」
直ぐに気持ちを切り替える。
伊坂を倒すチャンスであったが仕方は無い。


衛宮邸
剣崎たちの帰還を士郎は喜んで迎えた。
そして、居間で剣崎たちは幻想郷であったことを伝える。
自分達が伊坂の手によって幻想郷に閉じ込められたこと。
ローゼンメイデンの真紅と協力することになったこと。
冥界と呼ばれる場所で破滅の存在と呼ばれるものと戦ったこと。
翔がその破滅の存在と戦う為に造られた事。
八雲紫から幻想郷の存在を秘匿し、公開しない約束をしたこと。
そして、霊夢と魔理沙は幻想郷に残った事を外の世界に残っていた仲間に伝えた。

「……なるほど。奴らに捕獲されたのかと思えばそんな事態になっていたとはな。
ともかく、無事で良かった」
ブラボーは報告を聞いた後にほっとしたような様子で答える。
あの戦いの最中、ブラボーはカズキたちが全員、LXEに捕獲されたのだと思っていた。
状況を鑑みればそう考えても可笑しくはないだろう。
戦闘で破れたにしては痕跡も殆ど無く、されどその姿は無かったのだ。
「しかし、まさかお前達があの伝説のローゼンメイデンと接触していたとはな」
カズキたちの話の中、ブラボーはその点に興味を抱く。
「そう言えば真紅も錬金の戦士について知っていたっけ」
「お前は知る筈も無いか。ローゼンメイデンは元々、錬金戦団に所属していた一人の錬金術師が作ったものだ。
いや、錬金術師である前に人形師だな」
「それがローゼン……」
「あぁ、そしてローゼンメイデンには賢者の石の試作品が組み込まれていると伝えられている。
それ故に錬金戦団はその足取りを常に追い続けているのだが結局、一体の捕獲も出来ていない状態だ」
「その話は初耳ですね」
斗貴子が少し驚いた様子でブラボーに告げる。
「お前はホムンクルス撃破が主任務だったからな。任務についていない戦士以外は知っているものは殆ど居ないだろう。
かくいう俺も戦士長と言う地位に立ってようやく知ったぐらいだ。
お前達が偶然にもローゼンメイデンと接触していた。
その事実が無ければ伝える理由も無かったしな」
戦士の全てがローゼンメイデンの行方を追っているという訳では無いようである。

「そう言えば……ブラボー、裏切りの戦士の名前って分かる?」
カズキは真紅の話からヴィクトリアの事を思い出す。
そして、彼女が裏切りの戦士の関係者ではないかというユーノの推理も思い出していた。
その確証を得る為にカズキがブラボーに尋ねる。
もしかしたら位相を越えて繋がる世界に隣接する二つの錬金術という名の点が繋がるかも知れない。
「いきなりだな。名前は判明している。
ヴィクター・パワード、それが俺たちが追う裏切りの戦士の名だ」
その言葉にカズキは眼を見開く。
これは果たして偶然だというのだろうか。
ヴィクトリア・パワードとヴィクター・パワード、同じ性を持ち共に100年前より存在している錬金術の関係者。
それが遠く離れた日本の冬木という土地と幻想郷に存在している。
距離にすれば恐ろしいほどに近く、だが、決して歩いては届かない場所。
カズキには彼女達が本当に親子なのかもどういう理由でこのような事態になっているかも分からない。
だが、もし親子なのだとしたらヴィクトリアはヴィクターに会いたいのではないのかと考えた。
一人悩むカズキに斗貴子は怪訝な表情を浮かべる。
「カズキはどうしたんだ?」
「んー……あぁ、斗貴子さんは知らないのか。幻想郷にある紅魔館ってところに住んでるホムンクルスの女の子の事」
剣崎がその様子に気づいて斗貴子に告げる。
その言葉に斗貴子の表情が険しくなる。
「なに?お前達はホムンクルスに会っていたのか。それでちゃんと退治してきたんだろうな」
「いや、別に倒してないはずだけど」
「何故だ?」
「何故って……俺は直接、その子に会ってないけど。
その子は真紅と知り合いらしいし、その館に住んでるパチュリーって子の友達でもあるみたいなんだ。
だからじゃないかな?」
「だからってホムンクルスは人喰いの化け物だぞ。何故、野放しにした!」
激昂する斗貴子。
その様子を横から眺めていたシンが口を挟む。
「大丈夫ですよ。
そいつが居るところは人喰いの化け物のうようよしてる幻想郷ですし。
それにその館も主人からして吸血鬼っていう化け物の館ですから」
少し棘のあるような様子でシンは呟くように告げる。
「何もそんな風に言う必要は無いだろ」
そんなシンを剣崎が窘めるがシンはそっぽを向いてしまう。
その様子に剣崎は肩をすくめた。
以前からレミリアの事を気に入っていた訳ではないが前回の事から頑なに毛嫌いをしている節すらある。
「斗貴子さん、カズキやなのはが大丈夫だって言ったんだ。信じてあげても良いんじゃないかな。
それに幻想郷には霊夢も居る。
何か問題があれば彼女が解決するさ」
剣崎が斗貴子にそう告げるが斗貴子はその言葉に苦虫を噛み潰したような渋い顔を作る。
だが、数瞬の間の後にため息を付き表情を崩した。
「早急に手を出せる問題じゃない無い以上、今、ここで言い争っていても仕方ないな。
とりあえずは剣崎さんたちの言葉を信じるとしよう」
既に見逃しているといえばパピヨンもそれに該当する。
手を出せない存在に気を惹かれていては目の前の敵に勝てるものでも無い。


桜田家
「折角、居なくなったと思ったのにもう、戻ってきたのか」
桜田ジュンは帰ってきた真紅に冷たく当たる。
「こうは言ってるけど真紅ちゃんが帰ってこなくてずっと心配そうにしてたのよ」
だが、姉ののりがそんな彼の見栄を無視して真紅に告げた。
ジュンはその事をのりに怒鳴る。
真紅はその様子を見て微笑んだ。
帰ってこれたのだと安心する。
だが、それだけだ。
帰ってこれただけ……自体は全くと言っていいほどに進展していない。
「……それで何処に行ってたんだ?何か探しに行ってたみたいだけど」
「えぇ、探し物を探しにね……目的のものも見つけられたし、思いがけない人にも会えたわ」
「珍しく元気が無いな」
声に何時もの上に居るという自信が感じられない。
不安に晒された猫のようにか細く儚く聞こえる。
「私にだって不安はあるわ……でも、大丈夫よ」
真紅はそう気丈に答える。

ジュンの部屋
真紅はベッドの上に座り何事かを考えている。
その姿をジュンはパソコンの前に座りながら横目に見ることしか出来なかった。
ジュンでは今の彼女にかける言葉が見当たらない。
迷惑だと
ジュンはそう思っていた。
彼女が突如としてこの家に現れて、自分の生活の場を乱されて。
だが、彼女が強い意志を持って何かを成そうとしていることを知っている。
そんな彼女の不安そうな様子を始めてみてジュンの心は揺れていた。
だけど、元気付けようと思ったとして何と言えば良いのか。
思い沈黙が部屋を支配する。
それを打ち破るかのように何かが窓をぶち抜いて現れた。
「なんだ!?」
突然の自体にジュンが叫ぶ。
割れたガラスの破片が部屋へと飛び散り、夜の空気が部屋へと流れ込む。
重い空気は吹き飛び、替わりに一つの人形が部屋に現れた。
「助けてくれです、真紅!」
「翠星石!?」
突如として乱入してきた緑色のドレスに身を包んだオッドアイの人形。
それはこの戦いを更に進める一つの事件を引き起こす事になる。



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